吾儕われわれ)” の例文
余程彼よりは上手うわてだ。吾儕われわれの親類の中で、彼の細君が一番エライと俺は思ってる。細君に心配されるような人間は高が知れてるサ
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾儕われわれ軍医はこれを自傷ゼルプスト・ウンデー……略してS・ゼルウーと名付けている。すなわちS・Wの特徴は生命に別条のない手や足に多い事である。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あの時吾儕われわれの会見したことは、ちゃんと書面にこしらえて、一通は記念の為に正太へ送ったし、一通は俺のとこに保存してある」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そんな卑怯な、横着な傷に吾儕われわれ、軍医が欺むかれて、一々鉄十字勲章と、年金を支給されるように吾々が取計らって行ったならば、国家の前途は果してドウなると思っているのか。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そりゃあ、君、進んでいるさ」と相川は歩きながら新しい巻煙草に火をけた。「吾儕われわれの若い時とは違うさ」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「成程、御若い方の読むんで、吾儕われわれの相手になるものじゃありません。ここの処なざあ、細いすじのようです」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ねえ、橋本君、吾儕われわれの商売は、女で言うと丁度芸者のようなものだネ。御客大明神だいみょうじんあがめ奉って、ペコペコ御辞儀をして、それでまあぎょくを付けて貰うんだ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「原君、原君、まだまだ吾儕われわれの時代だと思ってるうちに、何時いつの間にか新しい時代が来ているんだね」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾儕われわれが豊世さんからうらやまれるようなことは何にも無いサ——唯、身体が壮健じょうぶだというだけのことサ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「とてもあの娘は吾儕われわれの力には及びませんでしたッて。医者がもう見放してしまった病人ですぜ。それが貴方、家族の人達の非常な熱心な祈祷きとうの力でたすかったんですからね」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾儕われわれの関係は肉の苦しみから出発したようなものだが、どうかしてこれをかしたいと思うね」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「高瀬は、君、あんまり澄してるからね、ちっと引張ひっぱり出さんけりゃ不可いかんよ」と言って、相川は原の方を見て、「君も引越して来たら、是非吾儕われわれの会の為に尽力してくれ給え」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「福ちゃんの旦那さんに成ろうという人じゃないか……行く行くは吾儕われわれの弟じゃないか……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾儕われわれは友達ではないか——どこまでも友達ではないか——互に多くの物に失望して来た仲間同志ではないか」この思想かんがえは、三吉に取って、見失うことの出来ないものであった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その時、岸本は日頃逢い過ぎるほど人に逢っていることを書いて、吾儕われわれ二人は互いに未知の友として同じ柳並木のかげを楽もうではないか、という意味の返事をその青年に出した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何と思われたって仕方が無いじゃないか。唯、真実ほんとうによく知って貰いたいと思うね……大きくなってわかりさえすりゃ、そりゃお前吾儕われわれの心持を認めてくれる時もあろうじゃないか」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
コウカサスの方へ入って行く露西亜ロシアの青年が写してあるネ。結局つまり、百姓は百姓、自分等は自分等というような主人公の嘆息であの本は終ってるが、吾儕われわれにも矢張やっぱりああいう気分のすることがあるよ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)