否應いやおう)” の例文
新字:否応
否應いやおうなしに縛つてしまひましたが、兎も角親分が歸るまで、そつとして考へさせてあります。今頃は請合うけあひ白状はくじやうし度いやうな心持になつて居るでせうよ
中庭を見やりながら彼れが考へた事は、理窟としてゞなしに、實感として否應いやおうなしに彼れに逼つた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
しばらく煖爐ストーブはた烟草たばこかしてつてゐるあひだに、宗助そうすけ自分じぶん關係くわんけいのないおほきな世間せけん活動くわつどう否應いやおうなしにまれて、やむとしさなければならないひとごとくにかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
母の側へ行くのに怖氣おぢけをふるつてゐた竹丸は、お駒に引ツ張られ、定吉に押されて、病室の入口の襖の蔭まで來てゐたので、それを見た千代松は否應いやおうなしに連れ込んで、京子の枕元に坐らした。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
乾酪性肺炎か粟粒結核か、事の眞相を否應いやおうなしに定むべき時が來た。自分の臨床上の技倆と研究上の蘊蓄とを、院長はじめ他の人々のそれと比較すべき時が來た。さう思ふと彼れの隻眼かためは光つた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)