名指なざ)” の例文
マルタゴン、鈴なり花のマルタゴン、名指なざしてもいいが、ほかの怪物くわいぶつよりもおまへたちのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
高木敬太郎と名指なざして訪ねると、道場の入口に現れたのは、二十歳前後の寛達くわんたつな青年武士で、これは妹の茂野によく似た見るから氣持の良いさはやかな若者です。
汝の名指なざしゝ諸〻の元素およびこれより成る物は、造られし力これをとゝのふ 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この魅するばかりの華麗な空を見て、はじめ大洋はしかつらをする。が、間もなく海面も、優しい、悦ばしい、情熱的な——とても人間の言葉では名指なざすことの出来ぬ色合になる
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
何処どこへ行くあてもないのを好加減な町を名指なざして二時間程ぐる/\乗りまはしてかへつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その後で、彼はイィシュトン家の二令孃とデント夫人とを名指なざした。彼は私の方を見た。ちやうど私は彼の傍に居合せた。デント夫人の腕環うでわがとれかゝつてゐたのを締め直して上げてゐたのだ。
「ではカムパネルラさん」と名指なざしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)