号鈴ベル)” の例文
旧字:號鈴
いったい父は講釈好こうしゃくずきの説明好であった。その上時間に暇があるから、誰でも構わず、号鈴ベルを鳴らして呼寄せてはいろいろな話をした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玄関の格子こうしを開けた時、お延の頭に平生からあったこんな考えを一度によみがえらさせるべく号鈴ベルがはげしく鳴った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のぼるならこちらが楽で安全であると思い直して、出合頭であいがしらの人をわずらわしくけて、ようやく曲り角まで出ると、向うからはげしく号鈴ベルを鳴らして蒸汽喞筒じょうきポンプが来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで帳面を引っ繰返しながら、号鈴ベルをしきりに鳴らして、母と兄の泊っている和歌の浦の宿へかけて見た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女が外出のため着物を着換えていると、戸外そとから誰か来たらしい足音がして玄関の号鈴ベルが鳴った。取次に出たお時に、「ちょっと奥さんに」という声が聞こえた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一行はそろって改札場かいさつばを通り抜けて、プラットフォームへ出る。号鈴ベルがしきりに鳴る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は感謝の辞と共に号鈴ベルを鳴らして談話を切った。次に平岡の新聞社の番号を呼んで、彼の出社の有無を確めた。平岡は社に出ていると云う返事を得た。代助は雨をいて又坂を上った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は感謝の辞と共に号鈴ベルらして談話を切つた。次に平岡の新聞社の番号を呼んで、かれの出社の有無をたしかめた。平岡はしやてゐると云ふ返事を得た。代助はあめいて又さかのぼつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼女が玄関の扉を開ける時、はげしく鳴らした号鈴ベルの音さえ彼にはあまり無遠慮過ぎた。彼が局部から受けるいやな筋肉の感じはちょうどこの時に再発したのである。彼はそれを一種の刺戟しげきに帰した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
じゃらんじゃらんと号鈴ベルが鳴る。切符きっぷはすでに買うてある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)