叱咤しつた)” の例文
昨夜芝公園は山木紳商の奥室に於て、機敏豪放を以て其名を知られたる良人をつとをば、小僧同然どうやう叱咤しつた操縦せるお加女かめ夫人にてぞありける、昨夜の趣にては
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼女は実に一箇巾幗きんくわくの身を以て、深窓しんそう宮裡きゆうり花陰の夢にふけるべき人ながら、雄健の筆に堂々の議論を上下し、仏蘭西フランス全国の民を叱咤しつたする事、なほ猛虎の野にうそぶくが如くなりき。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
製本屋を叱咤しつた、見本が出来た晩は一ト安心、十九日発売、依託雑誌の配本、返品受付、売捌元うりさばきもと集金、帳簿、電話——あれに心を配り、これに心を配り、愚な苦労性の私には
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
長吉ちやうきちはこの種の音楽にはいつも興味をもつて聞きれてゐるので、場内ぢやうない何処どこかで泣き出す赤児あかごの声とれを叱咤しつたする見物人の声にさまたげられながら、しかあきらかに語る文句と三味線しやみせんの手までをき分ける。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
平次は叱咤しつたしました。
心ある者よろしく挺身ていしん肉迫して叱咤しつた督励とくれいする所なかるべからず候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)