可怕こわ)” の例文
それでもまだ彼は、君の可怕こわがり方にはどうも本当らしさが見えないなどと云つて、彼女の話を覆さうといろいろ説いて見た。
このときの父の様子は余程狼狽ろうばいして居るようでした。それで声さえ平時いつもと変り、僕は可怕こわくなりましたから、しく/\泣き出すと、父は益々ますます狼狽うろた
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其癖そのくせ私は祖母を小馬鹿にしていた。何となく奥底が見透みすかされるから、祖母が何と言ったって、ちッとも可怕こわくない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そしてその「一匹食わんうちに」という表現でまたその婆さんは可怕こわい顔をして吉田をにらんで見せるのだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
お島は可怕こわそうに言ったが、やっぱりこの男を肺病患者扱いにする気には成得なりえなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勝手の間に通ってみると、母は長火鉢ながひばちの向うに坐っていて、可怕こわい顔して自分を迎えた。鉄瓶てつびんには徳利が入れてある。二階は兵士どもの飲んでいる最中。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
如何どうなきゃならんような気がして、むずむずするけれど、何だか可怕こわくて如何どうも出来ない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ひどい目に遭ってから、私は勘ちゃんが可怕こわくて可怕くてならなくなった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「泣かないでも可いじゃアないか。お前さんは亭主の言いつけ通り為たのだから可いじゃアないか。フン何ぞと言うと直ぐ泣くのだ。どうせ私は鬼婆おにばばアだから私が何か言うと可怕こわいだろうよ」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)