どや)” の例文
その時分熊本の城下にはどやしつけていい尻はどつさり有つたかも知れないが、他人ひと身体からだでは肝腎の痛さは判らなかつた。
もしか悪戯いたづらな蠅が、井口氏の鼻つ先にでもとまらうものなら、井口氏はその蠅叩きでもつて、脂ぎつた自分の顔をいやといふ程どやしつけ兼ねなかつた。
「斜視睨みの男は自分の助手に言つたさうだ。おい、俺は牛の眉間みけんどやしつけようと思つてる。だから、うまく牛を持つてゐて呉れなくつちや困るつて。」
と言つてきまつたやうに鋼鑼のよこつらを厭といふ程どやし付ける。銅鑼は急に腹が減つたやうな声をして唸り出す。
わめくと同時に、手に持つた鉄扇で、思ひ切り強く卓子テエブルどやしつける。(松下はこんな訪問には、いつも「体面」を置いてく代りに、机の抽斗ひきだしから鉄扇を持ち出す事にめてゐる。)
地方自治の事か何かで、氏は例の白熱のやうな雄弁で、自治は愛蘭アイルランドにも、自治は蘇格蘭スコツトランドにも、自治は威耳斯ヱールスにも許さなければならないと言つて、勢ひ込んでとんと卓子テーブルを一つどやしつけた。