受領ずりょう)” の例文
植田丹後守様とて受領ずりょうまである歴々の御社家、あの御主人はなかなかえらいお方で、奥様も親切なお方、あのお邸へお願い申しておけば大盤石だいばんじゃく
もし還俗げんぞくの望みがあるなら、追っては受領ずりょうの御沙汰もあろう。まず当分はおれの家の客にする。おれと一しょにやかたへ来い
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蒙古もうこ襲来のさい、人的や経済的にもさんざんな消耗に疲弊ひへいしたあげく、なんの恩賞もうけず、逆に、鎌倉幕府でうけのいい大名が受領ずりょうにあずかって
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その子良望よしもちから正盛まで六代、諸国の受領ずりょうとして、私腹を肥やす傍ら、武門の名を次第にとどろかしていったのである。
受領ずりょうといって地方の政治にばかり関係している連中の中にもまたいろいろ階級がありましてね、いわゆる中の品として恥ずかしくないのがありますよ。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一生受領ずりょうだった父が、私のためにいろいろと気づかって呉れて、私達をいまの中川のほとりの住居に移らせて下すったのは、去年の秋の半ば頃だった。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
当時の諺にも、「受領ずりょうは倒れたる所に土をもつかめ」という事があった。「受領」とは地方官の事で、地方官は「転んでもただは起きるな」というのである。
「それは」とお霜は声をひそめ、「木曽の山国を受領ずりょうする木曽義明でございます」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
受領ずりょう(国司)は到る所に土をつかめと言ふではないか、と言つたさうだ。
土の中からの話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
その子仲綱を伊豆の受領ずりょうとして自分は三位にのぼり、丹波国の五箇の荘、若狭の東宮川とうみやがわなどを所領として、誰もが晩年は安らかに過すと思っていたが
それから十年ばかりと云うもの、私の父はずっと受領ずりょうとして遠近おちこちの国々へお下りになっていた。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
西八条の邸内には、既に一門の重だった者たち数十人が、思い思いの鎧をつけて、ずらりと立ち並び、諸国の受領ずりょう衛府えふなどは、縁先からあふれて庭を埋めている。