おご)” の例文
旧字:
座談の時とはちがって、慈円僧正は、やや恐いようなおごそかな顔をもって、七条の袈裟けさを、きちっとさばいて正面に坐っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだけに、おごそかな天の荒ら息吹いぶきを真向にうけるのだから、弱虫やなまけ者、卑劣漢や臆病ばらには、とうてい辛抱しきれるものではあるまい。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
それから宮中の大広間に出て、大勢の尊い役人や、この国の四方を守る四人の王様や、その家来達から、一々御祝いの言葉を受けた時のおごそかだった事。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
おごそかに修祓しゅうばつの式守武忌
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
と、六尺の足を止めさせていた殿の駕内から、何か低い合図があったと見えて、一人の家来がおごそかに膝まずいてお駕の覗窓戸のぞきどをスーと開けた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王はじっとその有様を見ておりましたが、なおもおごそかな口調で責めました——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「夜光の短刀のことにつきまして……」と老人の痩躯そうくおごそかにそびえると、万太郎もやや態度をひきしめて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ブーレー博士はおごそかにうなずいた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)