には)” の例文
君もにはかに金なくてかなはぬ時、餘所にてそを借り給はば、二割三割などいひて、おびたゞしき利息を取られ給ふべし。さる時あらば、必ず我許に來給へ。
今迄自分の立つて居る石橋に土下座して、懷中ふところの赤兒に乳を飮ませて居た筈の女乞食が、此時にはかに立ち上つた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
近世のローマンサーなる曲亭馬琴に至りては批評家の月旦ひひやう甚だ区々たり、われも今にはかに彼を論評する事を欲せず。細論は後日を期しつ、試みに彼が一代の傑作たる富山とやまの奥の伏姫ふせひめを観察して見む。
今迄自分の立つて居る石橋に土下座して、懐中ふところ赤児あかごに乳を飲ませて居た筈の女乞食が、此時にはかに立ち上つた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二三十分も續いた『パペ、サタン、アレッペ』といふ苦しげなる聲は、三四分前に至つて、足音に驚いてにはかに啼き止む小田の蛙の歌の如く、礑と許り止んだ。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
二三十分も続いた『パペ、サタン、アレツペ』といふ苦しげなる声は、三四分前に至つて、足音に驚いてにはかに啼き止む小田の蛙の歌の如く、はたと許り止んだ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お夏は又何と思つたか、にはかに身を動かして、なゝめしげるに向けた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お夏も亦何と思つたか、にはかに身を動かして、斜にせなを繁に向けた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)