半月はんげつ)” の例文
蒲鉾かまぼこことをはべん、はべんをふかしとふ。すなは紅白こうはくのはべんなり。みないたについたまゝを半月はんげつそろへて鉢肴はちざかなる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すすきの穂を丸く曲げて、左右から重なる金のきらめく中に織り出した半月はんげつの数は分からず。幅広に腰をおおう藤尾の帯を一尺隔てて宗近むねちか君と甲野こうのさんが立っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七日の半月はんげつが空にあるほか、世良田をはじめ、新田ノ庄の闇は声もなかった。その眠りのなかで領民たちは、鎌倉の吏の苛烈を怨むより以上に、世良田ノたちをうらんでいた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いっぽう、アッカは、新しい寝場所ねばしょをさがしに南へ飛んでいきました。まだうすあかるいし、それに、半月はんげつが空高くかかっていましたので、すこしはものを見ることができました。
どの船からという事もなく幽暗なる半月はんげつの光に漂い聞ゆる男女が私語ささやきの声は、折々向河岸むこうがしなるしいの木屋敷の塀外へいそとからかすかに夜駕籠よかごの掛声を吹送って来る川風に得もいわれぬ匂袋においぶくろを伴わせ
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
折からの半月はんげつつばさにうけて、ゆうゆうとしてこちらへちかづいてくる。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鏡子は榮子が預けてあつた里の家から帰つて来て半月はんげつ程で旅立つたのであるから、この子に就いての近い過去としては、里から附いて来た娘のことを、とうとのねえやと呼んで、いくら抱かうとしても
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)