おまけ)” の例文
幾度いくたびえ、幾度殺されそうにしたか解らないこのそこないの畜生にも、人が来て頭をでて、おまけに、食物くいものまでも宛行あてがわれるような日が来た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ああ。貧苦ほど痛いものは無いね。貧苦、貧苦、子供は七人もあるし、家内には亡くなられるし——おまけに子供は与太野郎(愚物)ばかりで……。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
樺が場を踏んだ証拠は、馬の扱いが柔かで、ゆったりとしていて、おまけに捜りを入れるような目付をして、他の四人の呼吸を図っているのでも分る。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おまけに、君、その旦那を紹介した男が、旅費が無くなったと言って、吾家うちころがり込んで来る……その男は可哀想かわいそうだとしたところで、旅費まで持たして
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勝手を知った舟旅で、おまけに天気は好し、こうして独りで海を渡るということは、別にお種は何とも思わなかった。唯、彼女は夫のことが気に懸って成らなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おまけに、若い細君が水菓子を売ると聞いた時は、榊が戯れて言うとしか三吉には思われなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「家を探して歩くほどいやな気のするものは無いネ——おまけに、途中で、ヒドく雨に打たれて……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの通りウジャウジャ居るんですからネ……おまけに、大飯食おおめしぐらいばかりそろっていて
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三吉が自分の家へ子供を運んで置いて、復た電車で引返して来た頃は、半鐘がはげしく鳴り響いていた。細い路地や往来は人で埋まった。お仙が居なく成ったというさえあるに、おまけに火事とは。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)