剣客けんかく)” の例文
この時代の代表的剣客けんかくで、せい恬淡てんたん磊落らいらくであり、仕官を嫌って生涯仕えず、市井遊侠の徒と多く交わり、無拘束をもって終始したという。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小「フン剣客けんかく先生かえ、道理でお人柄が好いと思いました、わしすきの道だから随分懇意なものも有りますが、何流でござるか」
僕は小学時代にも「大溝おほどぶ」の側を通る度にこの叔父をぢの話を思ひ出した。叔父は「御維新」以前には新刀無念流しんたうむねんりう剣客けんかくだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これ一事いちじきわつらぬかんと欲すればおのづから関聯かんれんして他の事に及ぶが故なり。細井広沢ほそいこうたくは書家なれど講談で人の知つたる堀部安兵衛ほりべやすべえとは同門の剣客けんかくにて絵も上手なり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
この趣はたとえば茶の湯の師匠には平生の挙動にもおのずから常人と異ったところが見え、剣客けんかくの身体には如何いかにくつろいでいる時にもすきがないのと同じようなものであろう。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
真珠は高金こうきんだから僕のような貧乏医者は買って上げる訳にいかん、それに就いてかねて申上げました此方こちらのお娘子むすめごがお美しいと云うことを、北割下水きたわりげすい大伴おおともと云う剣客けんかくへ話した処が
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伝吉はある日ふとしたことから、「越後浪人えちごろうにん服部平四郎はっとりへいしろうと云えるもののいかりを買い、あわやりも捨てられん」とした。平四郎は当時文蔵ぶんぞうと云う、柏原かしわばら博徒ばくとのもとに用心棒をしていた剣客けんかくである。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先生の剣道は封建ほうけん時代の剣客けんかくまさるとも劣らなかつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)