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服部平四郎
伝吉は
後ろ手に障子をしめ、「
服部平四郎」と声をかけた。坊主はそれでも驚きもせずに、
不審そうに客を振り返った。が、
白刃の光りを見ると、
咄嵯に
法衣の
膝を起した。
しかし「伝吉物語」によれば、
服部平四郎の名を知るまでに「三
星霜を
閲し」たらしい。なおまた
皆川蜩庵の書いた「
木の
葉」の中の「伝吉がこと」も「数年を経たり」と
断っている。
伝吉はある日ふとしたことから、「
越後浪人服部平四郎と云えるものの
怒を買い、あわや
斬りも捨てられん」とした。平四郎は当時
文蔵と云う、
柏原の
博徒のもとに用心棒をしていた
剣客である。