利生りしょう)” の例文
これまでは罰や、罪業に対する一応の訓戒いましめじゃ。そこを助ける、生きながら畜生道に落ちる処を救いたまわる、現当利益りやく、罰利生りしょう、弘法様はあらたかやぞ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人が跣足はだしになって働いているというのだから細君が奥様然おくさまぜんすましてはおられぬはずで、こういう家の主人あるじというものは、俗にいうばち利生りしょうもある人であるによって
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
利生りしょう相見あいみえ豊年なれば、愈〻いよいよその瑞気ずいきを慕ひて懈怠けたい無く祭りきたり候。いま村にて世持役よもちやくと申す役名も、是になぞらへて祈り申す由に候。但し此時このとき由来伝へはなし有之これあり候也(以上)
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
不破の関の板間いたまに、月のもるこそやさしけれ。ありがたの利生りしょうや。おありがたの利生や。仏まいりの利生で、妻に行きあうたのう。悪しきを払うて助けたまえ、天理おうのみこと。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
権現ごんげん様のご利生りしょうでもきっと迎えの船が来て、みやこへかえることができるでしょう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そして、自分が預る「仏の利生りしょう」を、それだけ妹の方に分けられはすまいかと、今さら不安な気持が起って来ると、自分よりも先に医者を迎えに行ったお留の仕打ちに微かな嫉妬を感じて来た。
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
有りがたの利生りしょうや、伴天連様の御影で、寄衆の頭を、すんと切利支丹。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
武州大鳥といふ在所に利生りしょうあらたかなる十王まします。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)