出端ではず)” の例文
市を出端ではずれると、人もまばらに、空地があって、その先は寺院らしい。醤油くさい煮売りや濁酒だみざけのにおいのうえに、夕月が仰がれた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この前のとおり、大野木を出端ではずれるともう、人っ子一人の姿も眼に入りません。登るに従ってやがて車の左側に、例の混凝土コンクリート溝渠インクライン蜿蜒えんえんつらなっているのが見えます。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「ここですか、ここは、一つ目の浜を出端ではずれた、崖下の突端とっぱずれの処ですが、」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まだこの辺は御本丸の出端ではずれ、風趣が浅うござります。さ、この鷲の森を抜けて、もう少々幽邃ゆうすいな深山へ御案内いたしましょうか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地図にも載っていませんから、ここが何というところかわかりませんが、いよいよ海岸へ出端ではずれて来たのです。南高来みなみたかき郡の西端、千々岩ちぢわ湾の海岸へ、抜けることができたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
戸倉の暗い辻を出端ではずれると、汚い商人宿の軒下に、旅姿の女ひとりに、脚絆きゃはん手甲てっこうをかけた年配の煙火師が二人、首を長くして待っていたが、一行を見ると
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの、御案内申しましょう。この森の出端ではずれから細い道へはいると、二町ぐらいは近うございます」
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、宿場を出端ではずれると、道はまっ暗だった。ただ護りの侍どもが振りかざす松明たいまつのみがいぶって行く。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林を出端ではずれると、高い板囲いにつき当った。夜目にはただ長い長い塀の線が果てなく闇を縫っているとしか見えない。世に聞えた中野の原のお犬小屋というのがこれらしい。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五町七辻の福島を出端ではずれると、興禅寺こうぜんじの曲り角から登りになって、彼方かなたに関所のさくが見える。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蹴上を越えれば、京も出端ではずれる。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)