凄烈せいれつ)” の例文
凄烈せいれつな笑い顔を見せて、その両手の物を三人に示すと、李逵は切れ草鞋わらじでも捨てるように、それを路傍のやぶだたみへほうり投げてしまった。そして。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物の響といううちに、やっぱりそれはける物のなせる声でありましたけれど、前のとは違って人のはらわたにピリピリとこたえるような勇敢にして凄烈せいれつなる叫びでありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たださえ痩せほうけた丹下左膳、それが近ごろの夜あるきで露を受け霜に枯れて、ひとしお凄烈せいれつの風を増したのが、カッ! と開いた隻眼に残忍な笑いを宿したと思うと
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
カイザアたる孤高の宿命にさとくも殉ぜむとする凄烈せいれつの覚悟を有し、せめて、わがひとりの妹、アグリパイナにこそ、まこと人らしき自由を得させたいものと、無言の庇護を怠らなかった。
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
虎のうそぶくとよりは、竜の吟ずるがごとき、凄烈せいれつ悲壮な声であります。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
組織は、ふたたび収拾しあたわぬほどの大混乱、火事よりも雷よりも、くらべものにならぬほどの一種凄烈せいれつのごったがえし。それらの光景は、私にとって、手にのせて見るよりも確実であった。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とらうそぶくとよりは、りうぎんずるがごとき、凄烈せいれつ悲壯ひそうこゑであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)