内祝言ないしゅうげん)” の例文
お次の親たちが江戸から来て、いとも質素に、内祝言ないしゅうげんをすましたのは、晩春汁講しるこうのあった頃からまもない後のことだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えッ、黙らないか、武士に向って誘拐かどわかしとは何だ。——借金の抵当かたに、今晩は拙者が直々じきじきれ帰り、内祝言ないしゅうげんを済ませて、宿の妻にするに何の不思議だ。
内祝言ないしゅうげんだけを済まして内儀おかみさんになり、翌年になりますと、丁度この真桑瓜まくわうり時分下総瓜しもふさうりといって彼方あちらは早く出来ます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
本人だけは、あくまで萩乃様の良人のつもりでいても、内祝言ないしゅうげんはおろか、朝夕ろくに顔を見たこともない。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いやがるわたしをおどしつけて、みだらなことをさしたのも、今夜喜兵衛の孫娘と内祝言ないしゅうげんをするために、おまえさまを追いださなくては、つごうがわるいからでござりますよ」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
年のうちに内祝言ないしゅうげんだけを、東京ですますことに話が決まるまでに、例の店員が、いくたびとなく浅井のところへやって来たが、お今の兄からも手紙が来たり、支度の入費が送られたりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
内祝言ないしゅうげんさかずきを交わし、来年は婿入りをするときまっていたのに、相手はその約束を反古ほごにして、よそへ婿にいってしまった、初めはわけがわからなかったけれど、まもなく噂が耳にはいりました」
誠に急な事になりまして、ほんの内祝言ないしゅうげんをして、あとで貴方のところへお話しようと思っておりましたが、今丁度貴方がお出でなすって下すったから、何うかこれへお坐りなすって下さい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此方こちらは今内祝言ないしゅうげんの盃を取ろうとする所へ太左衞門が物をも言わずに上って来て、祝言の座敷へドッサリと坐って、これから談判を致しますというお話になります。鳥渡ちょっと一息つきまして。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長く居る気はありません、貴方もほんの当座の腰掛でいらっしゃるが口に出せんでも心中にるね、内祝言ないしゅうげんは済んでも別に貴方の披露ひろめもなし披露をなさる訳もない、貴方も故郷こきょう懐しゅうございましょう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)