全幅ぜんぷく)” の例文
……こゝではまちも、もりも、ほとんど一浦ひとうらのなぎさのばんにもるがごとく、全幅ぜんぷく展望てんばう自由じいうだから、も、ながれも、かぜみちも、とり行方ゆくへれるのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これが私の小学時代全幅ぜんぷくを語る。その頃は尋常科が四年、高等科が四年だった。私は八年間を優等の模範生で通したので、卒業の折、郡長さんから賞状を戴いた。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
が、紅葉の努力は全幅ぜんぷくあふれていたが、美妙斎の色彩は小説以外にはすこぶ稀薄きはくであった。
人物思想の全幅ぜんぷくに傾倒するというには、どことなく物足りないことがあるけれど、駒井の知識の実際に根ざし、計数を基として、ねちねちと語り出されるときには、絶対無条件で敬服
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その心の全幅ぜんぷくは、日ごと夜ごとに自分が、この若い蘇我の娘の肉体や心のすみずみに見いだす新たな思ひがけぬ発見への、驚異と歎賞とによつて、ほとんど占めつくされてゐると云つてよかつた。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)