儲君ちょくん)” の例文
しかれども彼を援引えんいんしたるものは、実に儲君ちょくん論その主眼にして、彼は実に一橋党のために擁せられて、ここに至りたるを忘るべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
允成ただしげは才子で美丈夫びじょうふであった。安永七年三月さくに十五歳で渋江氏に養われて、当時儲君ちょくんであった、二つの年上の出羽守信明のぶあきらに愛せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
諸王と帝との間、帝はいまだ位にかざりしより諸王を忌憚きたんし、諸王は其の未だ位に即かざるに当って儲君ちょくんを侮り、叔父しゅくふの尊をさしばんで不遜ふそんの事多かりしなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「家に長子あり、国に儲君ちょくんあり、亡君の印綬はおのずから在るべき所に在りましょう。あえて、あなたがご詮議せんぎになる理由はいったいどういうお心なのですか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごりっぱな儲君ちょくんとして天下の輿望よぼうを負うておいでになる東宮もおいでになるのでございますから、あなた様から特にお心がかりに思召す方のことをお話にさえあそばされておけば
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
諸侯を問わず、公卿を問わず、浮浪を問わず、幕臣を問わず、彼らが期せずして儲君ちょくん擁立運動に従事したるも、またべならずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
懿文いぶん太子のこうずるや、身をぬきんでゝ、皇孫は世嫡せいちゃくなり、大統をけたまわんこと、礼なり、と云いて、内外の疑懼ぎくを定め、太孫を立てゝ儲君ちょくんとなせし者は、実に此の劉三吾たりしなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
井伊直弼は、儲君ちょくん論よりして、水戸派と反対したるか、水戸派と反対したるが故に、儲君論に反対したるか。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
翰林学士かんりんがくし劉三吾りゅうさんご御歎おんなげきはさることながら、既に皇孫のましませば何事か候うべき、儲君ちょくんと仰せ出されんには、四海心をけ奉らんに、のみは御過憂あるべからず、ともうしたりければ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)