倹約しまつ)” の例文
旧字:儉約
「ガイさん、貴方にはすつかり参つちまひましたよ、私だつて蝋燭の倹約しまつまでは思ひつきませんでした。いや有難うございました。」
奥様はそと御歓楽おたのしみをなさりたいにも、小諸は倹約しまつ質素じみな処で、お茶の先生は上田へ引越し、謡曲うたいの師匠はあめ菓子を売て歩き、見るものも聞くものもすくないのですから
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
倹約しまつな人で車を勧めたが乗らない)帰らうと云ふ村井を栄一は引き止めて、協商の内容を聞いた。
主家ひとのものをうっかり粗末にしていた人が、自分の世帯になったから、これから倹約しまつにしようと思っても、なかなかそうはいかなくなって、ついつい一生むだをすることになります。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
と言つて女房に約束の黒繻子くろじゆすの帯を倹約しまつして、それをつて帰つた。——言ふ迄もなく画は黒繻子の帯と同格の値段だつた。
それがために辞書から「閣下」といふことばが減る訳でもないし、もしか真実ほんとに不足でもしたら、その折は代りに文部大臣宛のをでも一つ倹約しまつして
世の中に鼠ほどうるさい物はないが、何事にも倹約しまつ蘇格蘭スコツトランド人のハトンといふ男は、近頃普通の家鼠かそを馴らして、糸紡ぎをさせる事を思ひ付いた。
「筍が廉いから今のうちに死にたい。」——倹約しまつ商人あきんどの媼さんを、これ程よく現してゐる言葉はまたと有るものでない。媼さんといふ媼さんは、若い頃
「それぢや、眼をあけてようく御覧よ。」女史は幾らかちゆうぱらの気味で鵞鳥のやうにぐつと首を前に突き出した。「そして入場料だけ倹約しまつしとくといいわ。」
自然がかくばかり細かな用意をもって、倹約しまつして物を使っているのに、この木の芽の塩っぱい匂は、あまりに濫費むだづかいに過ぎ、あまりに一人よがりに過ぎはしないだろうか。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
おこしらへになるつもりで、お書きになつたのです。はい、出版費はせいぜい倹約しまつしましても、三千円はかゝるさうに承はりましたから、なか/\お大抵ぢやございません。
倹約しまつな京都人は、ひといてくれたものを、自分でたのしむやうな贅沢な事はしない。
米国の雑誌はいづれも広告のペエジがどつさりあるので、知られてゐる。キプリングの友達は、幾らか郵税を倹約しまつしたい考へから、広告の頁だけ引裂いて、残つた内容を一まとめにして送つてよこした。