依嘱いしょく)” の例文
旧字:依囑
これは燕丹の依嘱いしょくを重しとして荊軻はもとより一命を棄てるつもりで出掛けたのであったが、不幸にして見現わされて殺されてしまった。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
暮夜ぼやひそかに大垣の城下に戸田侯(内匠頭の従弟じゅうてい戸田采女正氏定とだうねめのしょううじさだ)老職の門を叩いて、大学擁立ようりつのことを依嘱いしょくした事実もある。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
またその後、帝国学士院では、大谷亮吉氏に依嘱いしょくして、忠敬の事蹟じせきを詳しく調査し、これが「伊能忠敬」と題する一書となって刊行されています。
伊能忠敬 (新字新仮名) / 石原純(著)
さらに兄に依嘱いしょくしえべくんば、我が小妹のために一顧を惜しまざれ。彼女は我が一家の犠羊ぎようなり。兄の知れるごとく今小樽にありてつぶさに辛酸しんさんめつつあり。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
たとえば僕は一千九百十九年の七月に、アメリカのジャイアントアーム会社の依嘱いしょくを受けて、紅宝玉ルビーを探しにビルマへ行ったがね、やっぱりいつか足は紅宝玉ルビーの山へ向く。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
内閣情報局と文学報国会との依嘱いしょくで書きすすめた小説には違いないけれども、しかし、両者からの話が無くても、私は、いつかは書いてみたいと思って、その材料を集め
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
帰朝するや否や余は突然講師として東京大学にて英文学を講ずべき依嘱いしょくを受けたり。余は固よりかかる目的を以て洋行せるにあらず、またかかる目的を以て帰朝せるにあらず。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
捨次郎は、そのたび胸をいためて、亡き五郎大夫の依嘱いしょくにすまない気がするのだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李陵は単于ぜんうからの依嘱いしょくたる降服勧告についてはとうとう口を切らなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
老年になるに従って自分の手ではそれを果たすことが困難になって来たので、そこで門人の大槻玄沢おおつきげんたく依嘱いしょくしてこの仕事を行うことに決心したのでした。
杉田玄白 (新字新仮名) / 石原純(著)
主君尊氏の依嘱いしょくもその熱意も決してそんなかろい思惑おもわくではなく
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
パストゥールにその病気の研究を依嘱いしょくしたので、彼はそれから五年間いろいろな苦心を重ねてこれをしらべた末に、ついに蚕から出るのからだのなかに病原となる微生物のあるのを見つけ出し
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)
と、憲房の老熟な思慮にくれぐれ善処を依嘱いしょくした。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)