体裁きまり)” の例文
旧字:體裁
うちでは阿母さんが一番気の毒だ。………併し阿父さんも、あんな羊羹色ようかんいろのフロツクしか無いんだもの、知事さんの前なんかで体裁きまりが悪るからう。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
みんな乃公おれの方を見て怖い顔をした。お歌さんは真赤になって、っとしていらっしゃいと言った。乃公は自分の衣嚢の中へ消え込みたい位体裁きまりが悪るかった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
長「おう、ちげえねえ、こりゃアどうも、すっかり忘れちまッた、カラどうも大御無沙汰になっちまって体裁きまりが悪いんでね、こんなとけえ来てしまったんで、誠にどうもツイ…」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
エヒミチは体裁きまりわるそうに病院服びょういんふくまえ掻合かきあわせて、さも囚人しゅうじんのようだとおもいながら、『どうでもいいわ……燕尾服えんびふくだろうが、軍服ぐんぷくだろうが、この病院服びょういんふくだろうが、おなじことだ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
まくり縮めたる袖を体裁きまり悪げに下してこそこそと人の後ろに隠るるもあり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
美奈子は其の金子かねをも大部分生活くらしの方に遣い込んで妹が上京して来た時余り体裁きまりが悪いので、言訳いひわけばかりに古道具屋を探して廉物やすものを買つて来たのが此の箪笥であつた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
松「だって体裁きまりが悪くて成らねえんだ、親指これが感附きゃアねえか知ら」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
捲り縮めたる袖を体裁きまり悪げに下して狐鼠〻〻こそ/\と人の後に隠るゝもあり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)