仕合しあい)” の例文
一度、仕合しあい谷の南を限る山の鼻を踰える際、崖を下ってみぎわを辿れば三時間も近廻りとなるというので、私は下ろうではないかと長次郎に勧めて見た。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ところが寛文かんぶん七年の春、家中かちゅうの武芸の仕合しあいがあった時、彼は表芸おもてげい槍術そうじゅつで、相手になった侍を六人まで突き倒した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夫人はもう未練のある証拠を眼の前に突きつけて津田をおさえたと同じ事であった。自白後に等しい彼の態度は二人の仕合しあいに一段落をつけたように夫人を強くした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仕合しあいに行って死んだと聞き、ふだんお酒が好きだった事など思い出し……お屋敷の往き帰りに、花でもあれば上げたり、時にはお酒など上げに来たまででございます
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正二しょうじは、今度こんど仕合しあいをしても、自分じぶんは、じゅうぶんてる、といわぬばかりの調子ちょうしでありました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、みちうえで、竹刀しないりまわしながら、仕合しあいのまねごとをはじめたのです。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
日ならず二人は綱利の前で、晴れの仕合しあいをする事になった。はじめは甚太夫が兵衛の小手こてを打った。二度目は兵衛が甚太夫のめんを打った。が、三度目にはまた甚太夫が、したたか兵衛の小手を打った。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「どうしても、たかいものがとくさ。しょうちゃん、いつか仕合しあいしてみない。」
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)