介殻かいがら)” の例文
しかし沖のかたに潮満ち寄せる日中の白帆の群が介殻かいがらを立て並べたように鋭く閃めき、潮先の泡に向って飜り落ちてはまたあおぎ上る鴎の光って入乱れる影が、ふと眼に入ると
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雪童子ゆきわらすは、風のように象の形のおかにのぼりました。雪には風で介殻かいがらのようなかたがつき、そのいただきには、一本の大きなくりの木が、美しい黄金きんいろのやどりぎのまりをつけて立っていました。
水仙月の四日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
往年予西インド諸島で集めた介殻かいがらを調べくれたリンネ学会員ウィルフレッド・マーク・ウェッブ氏の『衣装の伝統』(一九一二年板)に、洒落者しゃれものをコックス・コームと呼んだ訳を述べある。
介殻かいがら——大きいのは栄螺さゞえ位、小さいのははまぐり位の——見たいな家に猫のひたいよりまだ狭い庭を垣根で仕切って、隣の庭がみえても見えない振りをしながら、隣同志でも話をした事のないと云う階級の
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
今、繻子しゅすの寝床の介殻かいがらから抜けたスワンソン夫人の肉体は軽い空気の中に出てうす白く膨張する。彼女は逃げた肉体の重心を追う格好で部屋の左側に沿い室内靴をじゅうたんにすりつける。
バットクラス (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところが、第三に、そのたまり水がしおからかった証拠しょうこもあったのです。それはやはり北上山地のへりの赤砂利から、牡蠣かきや何か、半鹹はんかんのところにでなければまない介殻かいがら化石かせきが出ました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)