人懐ひとなつか)” の例文
旧字:人懷
牛馬の遊んでいる草原くさはらは一面にほのかな緑をなすって、そのすそを流れて行くあめ安河やすかわの水の光も、いつか何となく人懐ひとなつかしい暖みをたたえているようであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
貴僧あなたずん/\らつしやいましな、うもしはしません。恁云かういところですからあんなものまで人懐ひとなつかうございます、いやぢやないかね、お前達まへだち友達ともだちたやうで可愧はづかしい、あれけませんよ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
殊に、け高く人懐ひとなつかしそうな眸が、此の青年を見る人に、いゝ感じを与えずにはいなかった。クレイヴネットの外套がいとうを着て、一寸した手提かばんを持った姿は、又なく瀟洒しょうしゃに打ち上って見えた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
辰子は俊助の顔へ瞳を返すと、人懐ひとなつかしい声でこう云った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)