乱次だらし)” の例文
旧字:亂次
その疲れた、ぐったりした餅のように乱次だらしのないからだは、まるで柔らかく居睡りするたびごとに、全体を少しずつ動かしていた。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
事によると乱次だらしのない父親の愛情がさうさせたものらしい、子供にしては可愛気のないほこりのやうなものが、産れつきの剛情と一つになつて
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
で、まちでは病院びょういんのこんな有様ありさまらぬのではく、一そう棒大ぼうだいにして乱次だらしいことを評判ひょうばんしていたが、これにたいしては人々ひとびといたって冷淡れいたんなもので、むし病院びょういん弁護べんごをしていたくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、猫は驚いて一瞬間じっとすくんでいたが、やがて一つ欠伸あくびをして、背中を盛りあげ、またしゃがんで暫く眼をぱちくりさせてから、ぐったりと腰をまげると、そのまま乱次だらしなくこんでしまった。
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
乱次だらしない雨はふる、ふりそそぐ、にじむ、曳く、消ゆる、したたる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はげしい仕事のなかに、朝から薄ら眠いような顔をしている乱次だらしのない小野田の姿が、時々お島の目についた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
振られた年増女の私は間もなく腰を上げ、表に出るのであるが、あんなに飲んでいのちに別状ないものか、あんな乱次だらしのない奴はないと呟やいて見たものの、私はそのままでは帰れなかった。
房吉は時々出かけてゆく、近所の釣堀つりぼりへ遊びに行っていたし、房吉の姉のお鈴は、小さい方の子供に、乳房をふくませながら、ちゃの方で、手枕をしながら、乱次だらしなく眠っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)