もろ)” の例文
旧字:
もろはだ脱いで赤いじゅばん、拡げた扇子を振りまわし「太鼓が鳴ったら賑やかだ、ほんとにそうなら済まないね、ヘラヘラヘ」
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
皆の人のけはひで、覚め難い夢から覚めたやうに目を見ひらくと、あゝ、何時の間にか、姫は嫗のもろ腕両膝の間から抜けて居させられぬ。一時に慟哭するやうな感激が来た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
もろりてこぼるる魚のかずすくへども掬へどもまた輝りこぼるる
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もろの手にひたぶる抱く鯉ひとつこれの童は泣かむばかりなり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もろの眼を白く蔽へる兵ひとり見やる方だにおもほえなくに
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
脊に負ひて霰小紋のもろつばさほろほろてうは声ふくむとり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
毛ぶかくてもろの耳蔽ふ蒙古帽彼ら怖れずその眼の光
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)