且又かつまた)” の例文
且又かつまた金を貸した方の人物にしても、有余る金があるくせに、わづかばかりの貸金の期限が切れた瞬間から、破滅に瀕する大損害を蒙つたやうな幻覚を起し
総理大臣が貰つた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
臼井の姿が部屋から消えると、課長はその途端とたんに彼から頼まれたことを一切忘れてしまった。これは永年に亙る課長の修養の力でもあったり且又かつまた習慣でもあった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
且又かつまた茂吉は詩歌に対する眼をあけてくれたばかりではない。あらゆる文芸上の形式美に対する眼をあける手伝ひもしてくれたのである。眼を?——或は耳をとも云はれぬことはない。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
余の所謂いわゆる「呉一郎の第一回発作」の参考としては全然不必要の範囲に属するも、この記録を作製したるW氏の主張を尊重する意味に於て、且又かつまたがい事件に関する司法当局の探査方針
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
で、貴方あなたうなのだ、いたむと農婦のうふる……と、れが奈何どうしたのだ。疼痛とうつう疼痛とうつうこと思想しさうである。且又かつまた病氣びやうきくてはきてわけにはかぬものだ。はやかへるべし。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
且又かつまた自分に痴川の殺害を実行させようとたくらんでいる、という風に考えたかったのであろう。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)