不具者かたわ)” の例文
が、争われないのは、不具者かたわ相格そうごう、肩つきばかりは、みじめらしくしょんぼりして、の熊入道もがっくり投首の抜衣紋ぬきえもんで居たんだよ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せめて克子を不具者かたわなりにも一人の人間として世の中へ出してやるには、克子と同じような子供のための特殊学校のある都会で暮したいと
赤いステッキ (新字新仮名) / 壺井栄(著)
この時この瞬間ほど不具者かたわでありながら自分の両脚がシャンとしてスックと大地に四股しこを踏んで、両手を振って自由自在に闊歩のでき得るような
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
母「それだから私が云わない事じゃアない、不具者かたわにしちゃア済まないから、私も一緒に連れてっておくれ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
西洋彫刻の人物は、すべてせて、すらりとしてるんですから、余り短く、でくでくしてると、不具者かたわの人間見たようだって、あの人に気に入らなかったんです。
おとこかおは、ますますあおくなりました。太郎たろうは、この不具者かたわは、いったい何者なにものだろうとかんがえましたから
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかと思うと、別れた晩のお前の寂しそうな顔が見える。裁判官はああした事情を知らないものだから、ただお前がおれをこんな不具者かたわにしたという点に重きをおいたんだね。
暗中の接吻 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
白痴の粂太はぼんやりと空を仰いで佇んだが、不具者かたわとは見えぬ美しい顔に月の光が附し添って可笑おかし気な哀れさが漂っている。とその眼尻から涙が流れ次第に頬へ伝わって行く。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やかましい、どう盲人と、足のちぎれたばった野郎、よくもよくも、一処ひとところへ集まったものだ」銚子で食卓ちゃぶだいの上を叩いて、「こんな不具者かたわばかりの処で、酒なんか飲めるものでない」とついとって
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「へえ、まあ、不具者かたわでないのがっけものでございますよ」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「やかましい、黙ってろ、不具者かたわのくせに、引込んでろ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)