下脹しもぶく)” の例文
浜龍は東金とうがねの姉娘の養女で、東京の蠣殻町かきがらちょう育ちだったが、ちょっと下脹しもぶくれの瓜実顔うりざねがおで、上脊うわぜいもあり、きっそりした好い芸者だった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのうっとりと下脹しもぶくれした頬のあたりや、胸のまえで何をそうして持っていたのだかも忘れてしまっているような手つきの神々しいほどのうつつなさ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
少し下脹しもぶくれの可愛らしい顔が涙に濡れて、あかい唇のワナワナとふるういじらしさは、どんな剛情ごうじょうな平次も、折れるだろうと思われましたが、頑固に眼を閉じた平次は
しっとりと油にしめって居るたぼの下から耳を掠めておとがいのあたりをぐる/\と二た廻り程巻きつけた上、力の限り引き絞ったから縮緬はぐい/\と下脹しもぶくれのした頬の肉へ喰い入り
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一人はデップリした下脹しもぶくれの紳士で、一人はゲッソリほおのこけた学生風であった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
柔かみのある下脹しもぶくれの頬に、いつも薄く白粉を塗って、大きな束髪に結っていた。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
勝気らしい口元のきりりと締った、下脹しもぶくれの顔は、今よりもずっと色が白そうで、睫毛まつげの長いえた目にも熱情があった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
少し下脹しもぶくれの可愛らしい顏が涙にれて、紅い唇のワナワナとふるふいぢらしさは、何んな剛情な平次も、折れるだらうと思はれましたが、頑固ぐわんこに眼を閉ぢた平次は
若い顏、ポーツと顏を染めた、消耗性の熱、濃いまゆ、やゝ下脹しもぶくれで、それは清らかな美しい娘でした。