ほとり)” の例文
梧堂の居る所は小西湖亭と名づけ、蘭軒の詩にも「門蹊欲転小天台、窓歛湖光三面開」と云つてあるから、不忍池のほとりであつただらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
溝渠のほとりなる帆を張りたる軍艦に、洋館の側に起る納曾利の古曲に、煉瓦の壁の隣りなる格子戸の御神灯に
市街を散歩する人の心持 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
季氏、閔子騫びんしけんをして費の宰たらしめんとす。閔子騫曰く。善く我が為めに辞せよ。し我を復びする者あらば、則わち吾必ずぶんほとりに在らんと。——雍也篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
権徳輿の晩渡揚子江の詩に云ふ、遠岫有無中、片帆烟水ほとりと。已に是れ維語を用ふ。欧陽公の長短句に云ふ、平山闌檻倚晴空、山色有無中と。詩人ここに至つてけだし三たび用ふ。
我来圯橋上(我れ圯橋いきようほとりに来り)
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子、川のほとりに在りて曰く、逝く者は斯くの如きかな。昼夜をかずと。——子罕篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「吾願造觴大如舟。盛以鵞黄泛前頭。乗此酔中絶洋海。直到李九門前流。」佐藤子文は伊勢国五十鈴川のほとりに住んでゐた。遠江国とは海を隔てて相対してゐたので、此の如く著想したのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此年乙酉の八月十三日上野不忍池のほとりなる静宜亭に催された例会の席上の作と、中秋の作との中間に、葌斎かんさい詩集は「送森島敦卿還福山」の七絶一首を載せてゐる。敦卿とんけいしも樸忠ぼくちゆうと註してある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)