上町かみまち)” の例文
美満寿屋というのは表通の上町かみまちに出来ている飲食店であったが、主人というのが元を正せば洋服を着た方の種類の人物ひと
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「左様でございます。手前どもは上町かみまちの小屋に興行こうぎょうのお免許ゆるしを願っておりました染之助一座の楽屋者に相違ございません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上町かみまちの鶴の湯にそういうもよおしがあるのを清三も聞いて知っていた。夏の間、二階を明けっ放して、一日湯にはいったり昼寝でもしたりして遊んで行かれるようにしてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
上町かみまちの古本屋にはかつて雑誌の古を引取つて貰つた縁故もあつた。丁度其店頭みせさきに客の居なかつたのをさいはひ、ついと丑松は帽子を脱いで入つて、例の風呂敷包を何気なく取出した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
立下總國古河町穀屋儀左衞門方に逗留いたし七月四日朝五ツ時出立右の通り泊り/\探索たんさく仕つり候處相違無之さうゐこれなく別紙べつし廿七日泊りの場所栃木中町徳右衞門を上町かみまち名主方へ呼寄よびよせなほちく一吟味仕つり書付を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上町かみまちの鶴の湯はにぎやかであった。赤いメリンスの帯をしめた田舎娘が出たりはいったりした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
上町かみまちまで帰って行くと、問屋九太夫をはじめ、桝田屋ますだや蓬莱屋ほうらいや、梅屋、いずれももう髪の白いそれらの村の長老たちが改まった顔つきで、馬籠の新しい駅長をそこに待ち受けていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
土手に若葉をゆすッている血櫧あかがしの木立を楯にして、顔を焼きそうな対岸を眺めますに、燃えさかッている火の手はちょうど宿しゅく上町かみまち辺で、炎は人家の建てこんでいる、下へ下へと延びている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上町かみまちの芝居小屋だ——岩井染之助いわいそめのすけ楽屋がくやから出たんだとよ!」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)