上京かみぎょう)” の例文
ほとんど毎夜のように上京かみぎょうの方から遠い道を電車に乗って出て来ては路次の中に忍んで、女の欞子れんじの窓の下にそっと立っていた。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
上京かみぎょうを兵火によって破壊したのは、信長ではなくして足利将軍の責任である。信長はただ、市民の不幸に同情して復興を助ける。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
また上京かみぎょうの寝殿の長押なげしにい崩れて、柔媚じゅうびな東山を背にし、清澄な鴨川かもがわの水をひき入れた庭園に、恍惚こうこつとしてながめ入る姿を描くのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
内裏だいり、室町殿、それに相国寺の塔が一基のこっておりますだけ、その余は上京かみぎょう下京しもぎょうおしなべて、そこここに黒々と民家のかたまりがちらほらしておりますばかり
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
上京かみぎょうの方面から叡山えいざん——志賀山越えの方角へ渡ろうとすれば、どうしても、この一路へかかることになる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上京かみぎょうや松に水打つ公家屋敷 井々
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私は、その女の勤めていた先の女主人おんなあるじに会うために、上京かみぎょうの方から十一時過ぎになって、花見小路はなみこうじのその家に出かけて往った。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
内裏だいり、室町殿、それに相国寺の塔が一基のこつてをりますだけ、その余は上京かみぎょう下京しもぎょうをおしなべて、そこここに黒々と民家のかたまりがちらほらしてをりますばかり
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
所は、武蔵にとって記憶のふかい蓮台野からそう遠くない——上京かみぎょうの実相院あとの東南にあたる辻の角。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、くと、母親もそこに腰を掛けながら、もう先月の末からそこの所帯を畳んでしまって、自分は上京かみぎょうの方の親類の家に厄介になっているようなことを言っていた。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
近衛このえの町の吉田神主の宅にも物取りどもが火を放ったとやら、たちまちに九ヶ所より火の手をあげ、折からの南の大風にあおられて、上京かみぎょうの半ばが程はみるみる紅蓮ぐれん地獄となり果てました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
それまでいたよその家の二階がりの所帯を畳んで母親はどこか上京かみぎょう辺の遠い親類にあずけ、自分の身が自由になるまで、少しでもよけいなかねのいるのを省きたいと言っていた。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
近衛このえの町の吉田神主の宅にも物取りどもが火を放つたとやら、たちまちに九ヶ所より火の手をあげ、折からの南の大風にあおられて、上京かみぎょうの半ばが程はみるみる紅蓮ぐれん地獄となり果てました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
もとは父親の生きている時分から上京かみぎょうの方に住んでいたが、くるわに奉公するようになって母親も一緒に近いところに越してきて、祇園町の片ほとりの路次裏にわびしい住いをしていた。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
私は懐かしさにおどる胸をいだきながら、その晩方京都に着くと、荷物はステーションに一時あずけにしておき、まず心当りの落着きのよさそうな旅館を志して上京かみぎょうの方をたずねて歩いたが
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
上京かみぎょうの方の宿にもどってきた。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
上京かみぎょうの方の宿に戻って来た。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)