一蹴ひとけ)” の例文
父は椅子をつかみ、かかと一蹴ひとけりして、腰掛け台の藁を抜いてしまった。彼の足はそこをつきぬけた。足を引きぬきながら、彼は娘に尋ねた。
おもふかおもはないうちに、つまたけ落葉おちばうへへ、ただ一蹴ひとけりに蹴倒けたふされた、(ふたたびほとばしごと嘲笑てうせう盜人ぬすびとしづかに兩腕りやううでむと、おれの姿すがたをやつた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ざまあ見ろ、山田の内部の苦しみや懊悩を一蹴ひとけりしたのである。そして山田にとつて腹立たしいことには、かうした嘲笑を正しいと認めねばならなかつたのである。
道化芝居 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
ウンと力を入れて、一蹴ひとけりすると、今まで俯伏せになっていた怪物が、グニャリと仰向きになって、何とも云えぬいやらしい形の腹部を見せたが、それと同時に、実に驚くべき事が起った。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「まず敵の、河北郡の鳥越城を、一蹴ひとけちらしに——」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)