一浦ひとうら)” の例文
赤潮のつるぎは、炎の稲妻、黒潮の黒い旗は、黒雲の峰をいて、沖からどうと浴びせたほどに、一浦ひとうらの津波となって、田畑も家も山へ流いた。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だから、陸の一浦ひとうらほろぼして、ここへ迎え取ったのです。亡ぼす力のあるものが、亡びないものを迎え入れて、且つ愛し且つ守護するのです。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こゝではまちも、もりも、ほとんど一浦ひとうらのなぎさのばんにもるがごとく、全幅ぜんぷく展望てんばう自由じいうだから、も、ながれも、かぜみちも、とり行方ゆくへれるのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何となく、貧乏くさいわびしいものです。私などもおぼえがあります。親仁は問わずがたりに、姉娘は、輪島で遊女のつとめをする事。この高浜は、盆前から夏一杯、入船出船で繁昌はんじょうし、一浦ひとうら富貴ふっきする。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)