一刷ひとは)” の例文
弥生やよいの頃は、金石街道のこの判官石ほうがんいしの処から、ここばかりから、ほとんど仙境のように、桃色の雲、一刷ひとはけ、桜のたなびくのが見えると、土地で言います。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一刷ひとはけ、なぎの見えるあたりから、雨雲の滲んだ空へかけて、暁方あけがたの小雨が、山では雪になっていたのか、染め上げたように、まっ白になすられて、見るからうそ寒むい。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
またてく/\とぬま出向でむく、と一刷ひとはいたかすみうへへ、遠山とほやまみねよりたか引揚ひきあげた、四手よつでいてしづめたが、みちつてはかへられぬ獲物えものなれば、断念あきらめて、こひ黄金きんふなぎんでも、一向いつかうめず
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)