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旅僧
いつともなく
菊亭右大臣家の
釣り
橋にたたずんだ三人づれの
旅僧は、
人目をはばかりがちに、ホトホトと裏門の
扉をおとずれていた。
例の
下を
向いて
悠々と
小取廻に
通抜ける
旅僧は、
誰も
袖を
曳かなかつたから、
幸其後に
跟いて
町へ
入つて、
吻といふ
息を
吐いた。
さして立去たり
跡に殘りし男は
猶内の樣子を
窺ひ居る故
旅僧は見付られなば殺されもやせんと
息を
堪へて車の
蔭に
屈み居る中此方の
板塀の戸を