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ゆきとゞき
命ぜらるゝ儀有がたく
存じ奉つる
然しながら上意のおもふき
愚妻へ申聞かせ其上にて
御請仕つりたし
小兒養育の儀は
偏に女の手に
寄處にて私しの一存に
行屆申さずとて
急ぎ御前を
懸用人無事に紀州表の
取調べ
行屆候樣
丹誠を
凝し晝は一間に
閉籠りて
佛菩薩を
祈念し別しては紀州の
豐川稻荷大明神を
遙拜し晝夜の
信心少しも
餘念なかりしに
斯る處へ伊豆守殿より
使者を
此處へと申にぞ
其儘に差出せば
急ぎ
封押開見て是は三五郎の
手跡なり此
文體にては紀州表の
調方
行屆たりと相見え
勇たる文段なり
然ながら兩人の
着は
是非晝過ならん夫迄は
猶豫成難し
餘念ながら是非に及ばず
悴忠右衞門
後を