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ひきよせ
卒然手を
執って引寄せると、お糸さんは
引寄られる儘に、私の着ている夜着の上に
凭れ懸って、「
如何するのさ?」と
引寄見れば
是は
如何に市之丞が持來りし廿五兩の
金子包の
儘火入の
脇に有ければ文右衞門は女房お政を
呼び此金子は
何如致したるやあれ
程に
斷わりたるを
御免成れて御役目の
障に
成べしと申けるを粂之進
首を
振我其方に心を
懸ればこそ
沙汰なしに致し
置たり其恩を思はゞ
我方に居よ
暇は出すまじと
無體に
引寄るを
引寄十分に
食終り夫より
悠然と幸手宿へ立歸り此由を三五郎に
咄し密かに
喋し合せ彼等の子分が金兵衞の
敵と
狙ひ來る時は
斯樣々々と
手配を成して用心
堅固に居たりけり