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のつそり
老優は上着を着終るのも待たず
白襯衣の上へ
袴を
穿いた
儘、ロダンの彫像が動き出した様な
悠然した老躯を進めて、嵐の海の様に白い大きな二つの
僻ら目で見
下しながら
腹が減つたので
異つた
路を登つて街へ引返したが、黒塗の大きな木靴を
引ずつて敷石の上に音をさせ
乍ら
悠然と歩く
肥つた老人が土地で一流の
料理屋「アンリイ四世楼」を教へて
呉れた。
はや足音は次の間に
来りぬ。母は
慌てて出迎に
起てば、一足遅れに
紙門は外より開れて
主直行の高く幅たき
躯は
岸然とお峯の
肩越に
顕れぬ。