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けづな
今までは
些とも眼に
注かなかったが、綱は人間の
髪毛に
因て固く編まれたもので、
所謂「
毛綱」の
類であった。
ぴんからきりまで心得て
穴熊毛綱の
手品にかゝる我ならねば負くる
計りの者にはあらずと
駈出して三日帰らず、四日帰らず、
或は松本善光寺又は
飯田高遠あたりの
賭場あるき
が、
何人の考えも同じことで、巡査も
先ず
此の
毛綱に
縋って、行かれる所まで行って
試ようと思い付いた。
巡査は
斯う決心して、再び
四辺に鋭い眼を配ると、岩角に結び付けられたる
彼の長い
毛綱を見出した。
穴を飛出る時かならずかの
蹴綱に
触れば
転機にて
棚落て熊大石の下に
死す。