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えどじゅう
おせんが
慕う
菊之丞は、
江戸中の
人気を
背負って
立った、
役者の
菊之丞ではなくて、かつての
幼なじみ、
王子の
吉ちゃんその
人だったのだから。——
おいらァ
惚れ
惚れ
見とれてるんだ。
顔といい、
姿といい、お
前ほどの
佳い
女は
江戸中探してもなかろうッて、
師匠はいつも
口癖のようにいってなさるぜ。
いいえ、
放すものか、
江戸中に、
女の
数は
降る
程あっても、
思い
詰めたのはお
前一人。ここで
会えたな、
日頃お
願い
申した、
不動様の
御利益に
違いない。