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あおこけ
たとえば
青苔の
上に、二つ三つこぼれた
水引草の
花にも
似て、
畳の
上に
裾を
乱して
立ちかけたおせんの、
浮き
彫のような
爪先は、もはや
固く
畳を
踏んではいなかった。
軒の
樋はここ十
年の
間、一
度も
換えたことがないのであろう。
竹の
節々に
青苔が
盛り
上って、その
破れ
目から
落ちる
雨水が
砂時計の
砂が
目もりを
落ちるのと
同じに、
絶え
間なく
耳を
奪った。