しき)” の例文
「一切の苦厄をだしたまう、舎利子、しきくうに異らず、空は色に異らず、色すなわち是れ空、空即ち是れ色、受想行識じゅそうぎょうしきもまた是の如し」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
おおきないわがありまして、そのいわあたまが、すと五しきのようにひかるのです。なんだろう? といって、案内人あんないにんもたまげていました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
赤と黄とみどりと青とむらさきとの五しきのしまのはいった着物きものをつけ、三かくの金色の帽子ぼうしをかぶり、緋色ひいろ毛靴けぐつをはいて、ぶらりとさがっていました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
なにぶんにも野戦一しきの兵馬、海手うなではいかがせんと案じていたが、これで上々の配置がなると申すもの。……して、すでに三木殿以下の船手は?
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勤居つとめをる其外には傳八と申して私し方に二三年も奉公ほうこう致し是も篤實とくじつ者にて金の番人に致すとて心遣ひのなき者にて深川一しき町に八百屋やほやを仕つり當時は妻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空は、どんよりと曇っていましたが、その白っぽい雲の中へ、五しきの玉が、スーイ、スーイとのぼっていくのです。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
伏しておもう、某、しつを喪って鰥居かんきょし、門に倚って独り立ち、しきに在るの戒を犯し、多欲の求を動かし、孫生が両頭の蛇を見て決断せるにならうことあたわず
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
海辺にこんな五しきの貝殻があったり、西瓜にこんな危険性があったり——わたしは今のきまで西瓜は水菓子屋の店に売っているものとばかし思っていた。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
畢竟ひっきょう南北相戦う、調停の事、またす能わざるのいきおいり、今におい兵戈へいかさんを除かんとするも、五しきの石、聖手にあらざるよりは、之をること難きなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「うむ——色もあるにはある、しきすなわくう、空は即ち色なりといって、魂だって、色がえという理窟は無え」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しきというところから板橋というところまで、一里ほどの道の両側に隙間もなく棚を張り、唐の器物やら葡萄牙の珍品やら、山と積みあげて売買いしている。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
間に合せに出した白旗はくきもあるが、二つどもゑに五しきで九曜の星をとり巻かせたり、「我漢復振わがかんまたふるふ」などと大書たいしよしたりしたものもある。申報しんぱうの号外を子供が売つて歩く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
対象の世界 次に六境とは、六根の対象になるもので、しきしょうと香と味とそくと法とであります。六根に対する六つの境界という意味で、六境といったのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
この娘の命を狙ふ者は誰? 平次の眼は、若い二人の男、鳩谷小八郎と一しき友衞ともゑに釘付けになりました。
そばで見ると、紫もありゃ黄色い糸もかがってある、五しきの——手毬は、さまで濡れてはいねえだっけよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、金色こんじきの気は、次第に凝り成して、照り充ちたしき身——うつし世の人とも見えぬ尊い姿が顕れた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
しきの火花が、大空にとびちりました。さかんな音楽のひびきが、大地だいちをふるわせました。
又非 無楽復無憂 しきに非ず又くうに非ず、楽無くまたうれい無し
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
小供の葬式がた。羽織をた男がたつた二人ふたりいてゐる。さい棺は真白なぬのいてある。其そばに奇麗な風車かざぐるまひ付けた。くるまがしきりにまはる。くるま羽瓣はねが五しきつてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに当の其紳士は眼に見えるホテルの冷遇を気に掛けようとするでも無く、飾らしい飾の何処にも無い灰色一しきに壁を塗った薄暗い室へ這入はいるや否や、長椅子へドカリと腰をおろ
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
白衣はくえはかま股立もゝだちを取つて、五しきたすきを掛け、白鉢卷に身を固めて、薙刀なぎなたを打ち振りつゝ、をどり露拂つゆはらひをつとめるのは、小池に取つてむづかしいわざでもなく、二三日の稽古けいこで十分であつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しき見分みわけきませんから、心眼しんがん外題げだいを致しましたが、大坂町おほさかちやう梅喜ばいきまう針医はりいがございましたが、療治れうぢはうごく下手へたで、病人にはりを打ちますと、それがためおなかが痛くなつたり
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
級友という級友が皆然うで、平生へいぜいの勉強家は勿論、金箔附きんぱくつきの不勉強家も、試験の時だけは、言合せたように、一しき血眼ちまなこになって……鵜の真似をやる、丸呑まるのみに呑込めるだけ無暗むやみに呑込む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しきいと縷糸よりいと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
そもそも独楽にもいろいろござります、古くは狛江こまえ高句麗こくりゴマ、しまからわたった貝独楽べいごまも、五しきにまわる天竺独楽てんじくごまも、みんな渡来とらいでございます。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白と朱のや、黒と牡丹と緑のや、さては五しきもいろとり/″\のや、なべての羽根はみなことごとく世にも美しく花々しく彩られてはゐたからである。
下町歳事記 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
フワフワと、五しきの雲にのって、天へのぼっていくような、なんともいえないたのしい気持ちになるのでした。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くうを見ます、空というのは虚無ではないです、つまり、しきを見ないでくうを見るです、西洋人には、色を見ることだけしかできないで、空を見ることができません
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
堂内はゴシツク式建築の大寺院の例に漏れず薄暗い中に現世げんせかけ離れた幽静いうせいを感ぜしめ、幾つかの窓の瑠璃るりに五しきいろどつた色硝子ガラスが天国をのぞく様に気高けだかく美しい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「御所造りの羽目はめに、五しきのペンキを塗ったくったのも? 地境じざかいの松の頭をチョン切ったのも?」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
招ぎ御上にはてん文お稽古中なれば天文臺へ入せらるゝなり其用意よういすべしと申付るにぞ役人は早速其用意をなしまづ天文臺へは五しきの天幕を張廻し長廊下より天文臺まで猩々緋しやう/″\ひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一切空だと悟ったところで、くうはそのまましきそくした空であるかぎり、煩わしいから、厭になった、きらいになった、つまらなくなったとて、うき世を見限ってよいものでしょうか。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
そうなる時には、令室おくがたの、恋の染まった霊魂たましいが、五しきかがりの手毬となって、霞川に流れもしよう。明さんが、思いの丈をく息は、冷たき煙とたちのぼって、中空の月も隠れましょう。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薬売くすりうりの少年しょうねんは、したるとはるかになみいわくだけ、ひかりして、うつくしいにじえがいています。なるほど、がけのしたまで、つちけずとされて、五しきいろどられたしおにおうみせまっていました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
御天道おてんとうさまが来ました。五しきの雲へ乗って来ました。大変よ、貴夫あなた
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しき友衞ともゑは折入つて兩手を疊に突いて、斯う深々と言ひ進むのです。
日の光に、金色の三角帽かくぼうがきらきらとかがやき、五しき着物きものがにじのようにかがやきました。どう見ても、生きた人形が自分でおどってるのでして、コスモはただそれについてまわってるだけでした。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しきにちかちか光るダイヤモンド、まっ赤なルビー、青っぽく光るサファイア、エメラルド、そのほか、スミ子ちゃんの名もしらぬ宝石が、ずらっとならんでいるのでした。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「一鉢千家のいひ、孤身幾度の秋、くうならず又しきならず、無楽また無憂、日は暖かなり堤頭の草、風は涼し橋下の流、人しこの六を問はば、明月水中に浮ぶ」と吟じおわってから
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
細川藤孝ふじたかは、丹後の一しき義直よしなおを亡ぼして、その田辺の城を、信長に献じ、信長から
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
メロンは唐茄子なすのやうな形も中味の色もつた真桑瓜まくはうりに似た味の瓜で氷でひやしてあるのを皮を離して砂糖を附けて食べるのである。五しきの藁のつとなかば包まれた伊太利亜イタリアの赤い酒も来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此日このひ本線ほんせんがつして仙台せんだいをすぐるころから、まちはもとより、すゑの一軒家けんやふもと孤屋ひとつやのき背戸せどに、かき今年ことしたけ真青まつさをなのに、五しき短冊たんざく、七いろいとむすんでけたのを沁々しみ/″\ゆかしく
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かぜのふきすさぶたてもののそとって、五しきにかがやくネオンをながめながら、なかからもれる、たのしそうな音楽おんがくこころのうきたつようなうたにききほれるだけで、煉瓦れんがのかべをへだてて、そこには
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やゝ暫く經つて、緊張のゆるんだ一しき友衞ともゑは、丁寧に一禮しました。
あいつが人を犯し、人からとがめられることのかぎりはしょくしきとの外に出ないのだ。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ダイヤモンドやルビーや、そのほかいろいろの宝石がちりばめてあって、五しきのほのおが燃えたっているように見えるので、だれいうとなく、「ほのおの宝冠」と名づけられていました。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしは、かみさまにおつかえしています。くもうえにて、五しきはたります。また、かみさまのお使つかいで、ときどき、ほし世界せかいからほし世界せかいへと、びまわることもあります。」と、天女てんにょこたえました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「私は——牛込御納戸おなんど町の一しき道庵だうあんの伜綾之助あやのすけと申します」
箱の中から、パッと五しきにじがたちました。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)