)” の例文
猪子いぬしゝしてママおほきなものよ、大方おほかたいぬしゝなか王様わうさま彼様あんな三角形さんかくなりかんむりて、まちて、して、わたし母様おつかさんはしうへとほるのであらう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
してその時私は考へた、都会は美くしいが実に怖ろしい処だ、彼処あすこには黄金、酒、毒薬、芸術、女、すべてが爛壊らんえに瀕してゐる。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鬼は、手拭てぬぐいで堅く両眼りょうがんを閉められて、その石の間に立たされた。してあとのものは、足音を立てずに何処どこへか隠れてしまった。
過ぎた春の記憶 (新字新仮名) / 小川未明(著)
饅頭まんぢゆうが唯ひとつ寂し相に入つてゐる汁で飯を食べたことなどもある。して、そこで勧められるままに、父の追善つゐぜんのために廻向ゑかうをしてもらつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
双生児ふたご以上の、くどいようですが、——カフェ時代の房枝では有りませんか? して更に私の疑惑を深めた所作と言うのは
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
してこんなだらけた風になったのも、恐らく朝鮮人の掏摸が此処までやったもので、何かの機会で遣り損じたものとしか想像は出来なかった。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
彼は由井と川原との会話を聞き乍ら、只管ひたすら自分が跳躍すべき機を待つてゐる。劇は高潮に達した。して愈々いよ/\彼の活躍すべきキツカケとなつた。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
そして信吾は、加藤に対してすこしの不快な感を抱いてゐない、かへつてそれに親まう、親んでして繁く往来しよう、と考へた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
して貴下が小生のためにこの唯一事までもお拒みになるほど、罪人に対して厳酷なお方とは想像し得ないのであります。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
してその一種の人とは即ち文学者……必ずしも今の文学者ばかりじゃなく、凡そ人間在って以来の文学者という意味も幾らか含ませたつもりだ。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
気抜したいじけた被虐待者から、疑惑に満ちた冷眼で視られた丈で、一言の不平も、一片の希望も聴き取れずに引き上げた、して本省への報告に
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
して一般の低地は商人街あきんどまちである。王宮は立派な近年の建築であるが、さびの附いて居ない白い石造いしづくりには難有ありがた味が乏しい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
して歐米をうべい海員かいゐん仲間なかまでは、此事このことらぬでもないが、如何いかにせん、この海賊かいぞく團體だんたい狡猾かうくわつなること言語げんごえて、そのきたるやかぜごとく、そのるもかぜごとく。
してきび/″\した筆致と幼き日を慕ふ情緒とを持つた大文学者の卵は夏になると、まつて東京から日本海の荒波の音の絶えぬ故郷へかえって来るのであつた。
若芽 (新字旧仮名) / 島田清次郎(著)
雪枝として美青年である。珍らしい事には二人共支那服を纏っているではないか。私は思わず足を止めた。しかし二人はこの私には一向気付いていないらしい。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すくなくとも喋舌しやべらないことをもつひど自分じぶんらがるもの馬鹿者ばかもの骨頂こつちやうつてろしいして此種このしゆ馬鹿者ばかものいまにチヨイ/\見受みうけるママなさけない次第しだいである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
して誰も見て居ないと豆鉄砲などを取り出して、ぱちりぱちりと打って遊んで居たこともある。
少年時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其間そのあひだ余程よほど文章を修行しゆぎやうしたものらしい、増上寺ぞうじやうじ行誡上人ぎやうかいしやうにん石川鴻斎翁いしかはこうさいおうの所へ行つたのはすべ此間このあひだの事で、してもつぱ独修どくしうをした者と見える、なんでも西郷隆盛論さいごうたかもりろんであつたか
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
雖然けれども悠長なして不斷の力は、ともすると人の壓伏に打勝ツて、其の幽韻はさゝやくやうに人の鼓膜に響く。風早學士は不圖ふと此の幽韻を聞付けて、何んといふことは無く耳を傾けた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
して其の丘のような横広い体躯を揺り起して、額をピタリ卓子につけて痛み入る程丁寧な挨拶。其の初めて上げた顔に二つ剥き出した茶色の大眼球、予は今も判然と覚えて居る。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
十四の小娘の云ひ草としては、小ましやくれて居るけれども、仮面めんに似た平べつたい、して少し中のしやくれた顔を見ると、側で聞いて居る人は思はずほゝゑませられてしまつた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
して要之助にはっきりと印象を与える為に度々見せたり持たせたりした。
夢の殺人 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
いけあしそよぎにうつくしい小波さゞなみちました——ガラ/\茶碗ちやわんはチリン/\とひゞすゞに、女王樣ぢよわうさま金切聲かなきりごゑ牧童ぼくどうこゑへんじました——して赤兒あかごくさめ、グリフォンのするどこゑ其他そのた不思議ふしぎ聲々こゑ/″\
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
して先ア金起さんもア、寧児覚えて居るだろう是がいつも云うお前のお母さんだよ、お父さんはお前を貰い子だと云う筈だ此れがお前の本統のお父さん、私は先アさきへ云わねば成らん事を忘れてサ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私は中に立つて、其の夫人と、先生とに接吻キッスをさせるために生れました。して、遙々はるばる東印度ひがしインドから渡つて来たのに……口惜くやしいわね。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
して、遥かに黒い物を見た時は、それがんであるか分らなかった。日の光りが弱って、沙原の上を黄色く染めていた。
日没の幻影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよ/\停車場の構内に着いたと思つた時には既に面と向つて驕奢なして冷酷な都会にブツツカツてゐたのである。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
父もまた子からの解放を喜んだ。して一人ゆつくり歩を運んで、ずつと前に来た時の記憶を辿りつつ、猛獣の檻を探し廻つた。目ざす虎の居る所は直ぐに解つた。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
して到るところでエスペラントの普及を計るのだと言つてその方の印刷物を沢山たくさん荷物として携へて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
思わず深い溜息ためいきが漏れた。して今一度眼をみはって彼女をみつめた。依然彼が後を跟けて来たの美人以外の誰でもない。余りのなさけなさに涙が腹の中で雨の様に降った。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
尤も此友人は倫敦に永く居た人で英文に堪能である所為せゐもあらうが、中々巧く書いてある、してその言草が好いぢやないか、エスペラントの容易やさしいのには驚いたトかうだ。
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
主人と、叔母と、うして三人の従姉妹等が寄つて居た。清は自分の身の一歩一歩若く盛んに成り行くに引きかへ、従姉妹等の二人迄が、子持に成つて居るのを不思議さうに眺めた。
若芽 (新字旧仮名) / 島田清次郎(著)
少将で予備になりましたが父は陸軍の軍人でして子爵なのでございます。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
して世間の評判が消えると、此の有志者も亦た共に烟のように亡くなつて仕舞ふ。予は谷中村破壊の最後の幕まで、翁が絶えず此「有志者」と云ふ恩人の為めに苦められて居るのを実見した。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
アハヽヽそれも道理もつともぢや、今に来たらば能く見て呉れ、まあ恐らく此地辺こゝらに類は無らう、といふものだ。阿呀おや恐ろしい、何を散財おごつて下さります、して親方、といふものは御師匠さまですか。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そこねえさんはつぶつてすわりました、して不思議ふしぎ世界せかいのあることをしんじました、ところで、ふたゝひらけば、すべてがちり浮世うきよかはるに相違さうゐないとはりつゝも——くさたゞかぜにサラ/\と
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
理學士りがくし言掛いひかけて、わたしかほて、して四邊あたりた。うしたみせ端近はしぢかは、おくより、二階にかいより、かへつて椅子いすしづかであつた——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長火鉢に火の気のないことや——してこの老婆は子も孫もなく一人で生きているということを考えた時、私はもはやこの老婆に捕われてしまって
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
して私が歩行あるきながら第一に受けた印象は清潔な青白い迄消毒されてゐる便所から泌み渡つてくるアルボースの臭気であつた。即ち都会の入口の厳粛な匂である。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
して何と云つても、虎をれる役者は、日本中に俺しかないのだ。さうだ。一つ虎をうまくやつて見物をわつと云はしてやらう。そして外の役者どもを蹴とばしてやらう。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
して配達料はと云へば麻布の奥から本郷の奥まで米一俵を配達するにも一人の配達夫と一輛の車とを要しながわづかに四銭か六銭である以上、決して大した実益は無いにちがひない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
何処か特徴のある顔が理由わけもなく彼の首をひねらした。して到頭とうとう思い出す事が出来た。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
して氣が散つたり凝つたりするのだ、と云つた方が至當な位である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其処そこしきものには熊の皮を拡げて、目のところを二つゑぐり取つたまゝの、して木の根のくりぬき大火鉢おおひばちが置いてあつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この時、月は雲におおわれた。一面に沙原は薄暗くなった。して月を隠した雲の色は、黒と黄色に色彩いろどられて、黒い鳥の翼の下に月が隠れたように見えた。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
してしみじみと桐の花の哀亮をそへカステラの粉つぽい触感を加へて見たいのである。
桐の花とカステラ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
して又一頻ひとしきり、異ふ意味での談話が盛つた。が、それでも二時近くなると、芸者たちもぽつ/\帰つて行き、割合に近くに住居すまひのあるS君とY君とも、自動車を呼んで、帰る事になつた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
さあ、みんなかへれ。してたれ宿屋やどやつて、わたし大鞄おほかばん脊負しよつてもらはう。——なかにすべて仕事しごと必要ひつえう道具だうぐがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
して頭髪をも剃り落して、真黒な頭巾ずきんを被った。今迄何処か人なつかしそうな柔和であった眼は、けわしくなって、生徒に対する挙動まで荒々しくなったのである。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
して一旦脱ぎてた外套ぐわいたうを、もう一度身につけた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)