狂人きちがひ)” の例文
『ナニ、そんなことつても駄目だめだ』とねこひました、『自分達じぶんたちだつてみんうしてたつて狂人きちがひなんだ。わたし狂人きちがひ。おまへ狂人きちがひ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「どうしたつてんだね、お前さん方は、狂人きちがひのやうに駈け出したりして?」と、その時、入口へ入つて来たチューブが声をかけた。
私があの女を憎むのはあの女が狂人きちがひだからではない。若しあなたが氣が違つたとして、あなたは私があなたを憎むだらうと思ひますか。
重詰ぢうづめはなへてつきだしたのでは狂人きちがひにされるよりほかはない……といつたおな大風おほかぜに——あゝ、今年ことし無事ぶじでよかつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何となれば、彼等も亦我が如く、自己の世界に他人と肩を並ぶるを嫌ふ事、狂人きちがひの親が狂人の話を嫌ふよりも甚しければ也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この隔離病舍にほど近い狂人きちがひ監房からは、咽喉のどの裂けるかと思はれるまで絞りあげる男の叫び聲が聞えはじめたのである。
(旧字旧仮名) / 島木健作(著)
マーキュ はて、あの蒼白あをじろ情無じゃうなをんなのローザラインめが散々さん/″\やつくるしめるによって、はて狂人きちがひにもなりかねまいわい。
スキンナアは狂人きちがひと見違へられたのだ。だが、怒るにも及ぶまい、すべての女は自分の亭主以外の男子をとこは大抵狂人きちがひか馬鹿だと思つてゐるのだから。
世間せけんからては、病的びやうてき頭脳づのう狂人きちがひじみた気質きしつひともないことはなかつた。竹村自身たけむらじしんにしたところで、このてんでは、あま自信じしんのもてるはうではなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「おすぎの奴、おれが狂人きちがひにでもなつたかと思つてやがるだらう。そして、あまり藝術に苦心するために腦が疲れたのだなんて思つてやがるだらう。」
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
犬をけしかけながら犬の先になツて走る腕白小僧や、或は行路病者、𢌞國巡禮、乞食僧侶、或はまた癩病患者、癲疳持てんかんもち狂人きちがひ、鼻ツかけ、眼ツパ、びツこゐざり
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたし狂人きちがひにされてしまつたのです。しかしなあにわたし奈何どうでもいので、からして畢竟つまりなんにでも同意どういいたしませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『思想家?』と文平はあざけつたやうに、『ふゝ、僕に言はせると、空想家だ、夢想家だ——まあ、一種の狂人きちがひだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
駐屯軍ちゆうとんぐんの間に黄色熱がひろがつて、二三か月の間に百分中の六十八九人が死んだゝめ、司令官が狂人きちがひになつたといふ例もあり、ブラジルでは、同じ病気で一年に三万五千人がたふれ
パナマ運河を開いた話 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
彼の勉強はその地方の評判に上る位ゐになり、勉強べんきやう狂人きちがひと人は評し合つてゐたといふ。勿論自分も勉強した。一時は級の首席をも占領し、可なりに勉強家といふ評判をも取つてゐた。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
十年ととせまへの狂院きやうゐんのさくら狂人きちがひのわれが見にける狂院のさくら
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
狂人きちがひさんは何うしてはる。」と千代松は何氣なにげなく問うた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
馬鹿ばかにして狂人きちがひをもかねてるよ』と追加つひかしてつた。
崖下がけしたのかの狂人きちがひの一軒家赤くかがやきかがやきやまず
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「話したところで狂人きちがひには解らんのよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
狂人きちがひのやうに、ろくろく足もとも見ずに往来をひた走りに走つたが、やうやく疲労のために駈ける足の速力がゆるんで来た。
「今は私はある特別な譯があつて火事のことをすつかり聽き度いのです。その狂人きちがひの、ロチスター夫人がそれに關係があると疑はれたのですか?」
これおもふと……いしげた狂人きちがひふのも、女學生ぢよがくせいれたくろばあさんの行列ぎやうれつも、けもののやうに、とりのやうに、つた、けたとうちに、それみな
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ ちがはぬが、狂人きちがひよりもつら境界きゃうがい……牢獄らうごく鎖込とぢこめられ、しょくたれ、むちうたれ、苛責かしゃくせられ……(下人の近づいたのを見て)や、機嫌きげんよう。
白痴ばかでも狂人きちがひでもないんぢやから、外の兄弟並に扱はにやならんし、尚更仕末に困るが、どうも不思議な人間ぢや。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
そしてうかすると、此方こつち狂人きちがひ扱ひにしさうなので、月窓の母親おふくろは黙つて帰つたが、道々あしのうらは地に着かなかつた。
狂人きちがひさ。それ、其処にあるのが(と構内の建物の一つを指して、)精神病患者の隔離室なんだ。夜更になると僕の下宿までの声が聞える事がある。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あいちやんはまつたく、なんこたへのせんやうもありませんでしたが、それでもほ、『それから、おまへ狂人きちがひだとふことはうしてわかつて?』とひつぎました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
何故世の中には情死しんぢう殺人ひとごろし強盗がうとう姦通かんつう自殺じさつ放火はうくわ詐欺さぎ喧嘩けんくわ脅迫けふはく謀殺ぼうさつの騒が斷えぬのであらうか、何故また狂人きちがひ行倒ゆきだふれ乞食こじき貧乏人びんぼうにんが出來るのであらうか。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あゝ、彼様あんな問を出すのは狂人きちがひだ、と斯う師匠のことを考へるやうに成つて、苦しさのあまりに其処を飛出したのである。思案に暮れ乍ら、白隠は飯山の町はづれを辿つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「とにかくあの人達ひとたち仕方しかたかしこかつた。」かれ時々とき/″\おもつた。大久保おほくぼのやうな稚気ちきおほ狂人きちがひ相手取あいてどることに、なん意味いみのあらうはずもなかつた。(大正14年7月「婦人の国」)
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
きみ彼等かれらしんじなさるな。うそなのです。わたし病氣びやうきふのはそも/\うなのです。二十年來ねんらいわたしまちにゐてたゞ一人ひとり智者ちしやつた。ところれは狂人きちがひるとふ、是丈これだけ事實じゝつです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
狂人きちがひ狂人きちがひよとてはやされき桜花さくらひし人間ひとや笑ひし
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
狂人きちがひの赤き花見て叫ぶときわれらしみじみ出て尿いばりする
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おれは狂人きちがひのやうに暴れだすところだつたが、大勢の者に抑へつけられてしまつた。まつたく奇態な風習で、何のことやらさつぱり譯が分らん。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
……狂人きちがひでもなんでもかまはん。自分じぶん生命いのちがけの女房にようばう自分じぶんすくふに間違まちがひるまい。すべまかしてもらはう。なんでもわたしのするまゝにしてください。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その朝は非常に靜かな朝であつた——あの狂人きちがひとの場面を除いてはなべて。教會の出來事は騷々しいものではなかつた。
清祓式をつてはみるが、一向効目きゝめが無くて狂人きちがひは殖えるばかりなので、いつそ大社教の管長様を迎へたらといふ事になつて、さてこそ千家管長の乗込みになつた。
さゝ、はやなしゃれ。生存いきながらへて、後日ごじつ自分じぶんは、狂人きちがひ仁情なさけで、あやふところたすかったとおひなされ。
『三月兎ぐわつうさぎんでゐる。何方どつちでもおまへきなはうたづねて御覽ごらん何方どつちみん狂人きちがひだから』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その身体のことも忘れて了つて、一日も休まずに社会と戦つて居るなんて——何といふ狂人きちがひざまだらう。あゝ、開化した高尚な人は、あらかじめ金牌を胸に掛ける積りで、教育事業なぞに従事して居る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「何が好いもんですか。ひと狂人きちがひだツて謂はれてよ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ふたたびは見る春けむ狂人きちがひのわれに咲きけむ炎の桜
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
疾風しつぷうごとけてくだん狂人きちがひが、あしからちう飛乘とびのらうとしたれると、づんとつて、屋根やねよりたかく、火山くわざんいはごと刎上はねあげられて、五體ごたいくだいた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
定めしあの娘つ子はおれを狂人きちがひだと思つたに違ひない。何しろ、ひどくおつ魂消てゐたやうだからなあ。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
と、長英はそんな本を読まない内から狂人きちがひになりかけてゐた頭をつて不思議がつたといふ事だ。
]すれば、狂人きちがひだと謂はれる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
雖然けれどもおどろくぢやありませんか。突然いきなり、ばら/\と擲附ぶつかつたんですからね。なにをする……もなんにもありはしない。狂人きちがひだつてこと初手しよてかられてるんですから。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まつたくどうしてあんな狂人きちがひじみた途轍もない空想が頭に浮んでゐたのだらう? まだ誰ひとり、おれを瘋癲病院へ入れようと思ひつかないうちで仕合せだつた。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
ある統計家の調べたところに依ると、七百四十三人の男の狂人きちがひのなかで、結婚した男の数二百一人に対して鰥夫をとこやもめは五十人、未婚者は四百九十二人といふ比例を示してゐる。