想像そうぞう)” の例文
「もし自分じぶんが、あの佐倉宗吾さくらそうごだったら。」と、空想くうそうしたことでした。あの悲惨ひさんきわまる運命うんめいにあわなければならぬと想像そうぞうしたのです。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
余はコロボツクルは衣服いふくいうすれどときとしては屋内抔にて之を脱ぐ事有りしならんと想像そうぞうす。以上は口碑にをもきをきての説なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
おそらく、きみには想像そうぞうもつかないことだろう。透明とうめいでいるために服をきないでいると、食べ物を口に入れることができないんだ。
門外漢もんがいかんの僕には人体(試験材料は蛙でも人間の筋肉でもあまり変りあるまいと想像そうぞうする)の内に恐しき力の潜伏せんぷくしていることを思った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
塾がまたはじまったそうだから、先生も君も日曜でなければひまがないだろうと想像そうぞうして、だいたい今度の日曜を予定している。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そしてまた、これからどんなものを見るだろうか、どんなにたくさんの冒険ぼうけんをするだろうかなどと、さまざまに想像そうぞうをめぐらしてみました。
一つの姿すがたから姿すがたうつかわることのはやさは、到底とうていつくけの肉体にくたいつつまれた、地上ちじょう人間にんげん想像そうぞうかぎりではございませぬ。
それはりっぱなきぬ産着うぶぎ想像そうぞうしたところと、目の前の事実とはこのとおりちがっていた。でもそれがなんだ。愛情あいじょうとみよりもはるかにたっとい。
といっても、分厚ぶあつふたがへだてているのでその意味いみはわからないが、なにせよ、人間の声がうずまいているのは想像そうぞうされる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外国の学者は、このおんがくを、じつにいいものだとおもっていました。でも、それはこの人だけの想像そうぞうでそうおもっていたのかも知れません。
マスノが今朝けさいった、かにをたたきつけたようだというのを思いだし、それは大人おとなの口まねだろうと思いながら、へんに実感をともなって想像そうぞうされた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
『これは奇妙きみょう妄想もうぞうをしたものだ。』と、院長いんちょうおもわず微笑びしょうする。『では貴方あなたわたくし探偵たんていだと想像そうぞうされたのですな。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この夫人ふじんうつくしいが、LIがゐたら、これも一きわつであらうことを想像そうぞうしたりしたが、しかし今夜こんやLIのゐないことはかへつて自由じゆうであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
けれども、今から想像そうぞうされるまご光栄こうえいに一しょに加わりたいというそのねがいは、ごくつつましいあわれなものだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「もしぬすまなかったのなら、なぜくのだ?」と生徒監はいった。「わたしは何もおまえぬすんだとはいやしない。ただ間違まちがってしたろうと想像そうぞうするまでだ。 ...
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
真実しんじつ外国干渉のうれいあるを恐れてかかる処置しょちに及びたりとすれば、ひとみずから架空かくう想像そうぞうたくましうしてこれがために無益むえき挙動きょどうを演じたるものというの外なけれども
なつ高原一帶こうげんいつたい高山植物こうざんしよくぶつがさきつゞいてゐたりする光景こうけいはとても、下界げかいでは想像そうぞうもつかないうつくしさです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
その星空をぼんやりとながめながら新吉は、曲馬団の仲間なかまくわわってからのことをいろいろと想像そうぞうしました。その想像はみんな、はなやかな、幸福なことばかりでした。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
その白骨をとむらうと想像そうぞうしえよう、それでもかれは、地図をかいた、その地図は、いまぼくらの唯一ゆいつの案内者となり、その洞穴は、いまぼくらの唯一の住宅となった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
僕は実際震災のために取り返しのつかない打撃を受けた年少の実業家を想像そうぞうしていた。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このはるまで、まだまだ子供こどもおもっていたおせんとは、つい食違くいちがって、一つたらい行水ぎょうずいつかうおりもないところから、おきしはいまだにそのままのなりかたちを想像そうぞうしていたのであったが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
自供じきょう内容ないようは、ほとんどあらかじめ当局側とうきょくがわ想像そうぞうしていたのとおなじである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
しかし、これらの甲胄かつちゆうをどういふふうにけてゐたかといふことは、あの埴輪人形はにわにんぎよう甲胄かつちゆうよそほふたのがのこつてをりますので、それを大體だいたい恰好かつこう想像そうぞうすることが出來できます。(第六十九圖だいろくじゆうくず
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
たゞ想像そうぞうしてかんがへてるだけでも、その生活せいかつかなしく、むねかんじられる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そのすこし前に芥川龍之介さんのたくはじめておにかかつて想像そうぞうとはまるでちがつたじつ持のいい人からかんじ入つたものだつたが、球突たまつきあひ手としてあんな持のいい印象いんせうを留めてゐる人は先づめづらしい。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
また車丁等には、上、中、下等の客というこころなくして、彼は洋服ようふくきたれば、定めてありがたき官員ならん、此は草鞋わらじはきたれば、定めていやしき農夫ならんという想像そうぞうのみあるように見うけたり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いろいろな想像そうぞうが一むねにわきかえる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なんというか、まだ、江南こうなんはるらないけれど、このちゃをすするときに、ゆめのような風景ふうけい恍惚こうこつとして想像そうぞうするのでありました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
フランメアとバタキーの想像そうぞうしていたことは、ほんとうでした。たしかに、ネズミたちは、ふえにすっかり心をうばわれてしまいました。
少なくともわたしにはそう想像そうぞうされたから、もはやわたしの素性すじょうげたり、バルブレンのおっかあに手紙をやったりされるおそれがなくなった。
五年後には字書じしょに現れなかったことが、こんにち日々の新聞に見ることを考えれば、今後五年にはいかなる新熟字しんじゅくじ、新思想が世に行わるるかは想像そうぞう出来ぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
室内しつないの有樣に付きては口碑こうひ存せず。火をきしあとの他、實地じつちに就いての調査てうさも何の證をも引き出さず。余は茲に想像そうぞうを述べて此點に關する事實じじつ缺乏けつばうおぎなはんとす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
どこまですッ飛んでしまったか、その距離きょり方角ほうがくにいたっては燕作えんさくにもちょっと想像そうぞうがつかないのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしはその当時とうじおもして、おぼえずなみだれつつも、ちかおとずれるこちらの世界せかいははがどんな様子ようすをしていられるかを、あれか、これかと際限さいげんもなく想像そうぞうするのでした。
もしぼくらが想像そうぞうするごとくこの島が、ニュージーランドよりずっと南のほうにあるものとすれば、これから五ヵ月のあいだ——十月までは雪のために外へ出ることはできまいと思う。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
多分たぶん彼等かれらつてはたのしい一であるべきはずだつたのであらうがおしのやうにだまりこくつた我々われ/\にが表情へうぜう無愛相ぶあいそう態度たいどとが、如何いか彼等かれら失望しつぼうさせたかは、想像そうぞうあまりあるものであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
の国々が従来未開国みかいこくに対するの筆法ひっぽうちょうして想像そうぞうするにるべし。
じょうさんは、人形にんぎょう行方ゆくえおもったのでした。しかし、それは、どこへ、どうなってしまったものか、ほとんど想像そうぞうのつかないことでした。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
でも、そのかわり、はたらいたり勉強べんきょうしたりしなくてもいいんだから、などと、なんどもなんども想像そうぞうしてみるのでした。
わたしがマチアの位置いちであったなら、おそらくかれと同様な想像そうぞうをしたかもしれなかったが自分の位置としてわたしはそんな考えを持つのはまちがっていると感じた。
いま調理法ちょうりほうたいへん手数てすうのかかるものであることはうすうす想像そうぞうされるのでございます。
もとより明言めいげんするを得るかぎりには非ざれどこころみに想像そうぞうを畫きて他日精査を爲すの端緒たんちよとせん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
なるほど、これでは三、四十人の覆面ふくめん少女が、やすやすと躑躅つつじさきりこんだわけだが、まだ龍太郎には、この手組の菱筏ひしいかだが、だれに使用されたものか想像そうぞうはつかなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とやりめるやつがあった。僕はしばらく立って見ていたが、もの静かに思想を交換するさまは、むかしソクラテスがアテネの市場で道をいたときは、かくもあったろうかと想像そうぞうが浮かんだ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ひとりとしてものもいうものはない、四人はだまって想像そうぞうにふけった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
巧妙こうめうなハムレツトの一ふし黙劇もくげきがはじまつた。それは素人しろうととはおもはれないしつかりしたかたにはまつたものらしかつた。多分たぶん英国えいこくあたりのハムレツト役者やくしやのそれをつたものだらうとわたし想像そうぞうした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そればかりでなく、ある時分じぶん、二ほんみじかあし内輪うちわがっているから、ちょうどブルドッグのあるくときのような姿すがた想像そうぞうさせたのでした。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはまえからこのしゅんかんのことをゆめのように考えては、きっともうそのときは幸福にむねがいっぱいになりながら、父親のうでにとびついてゆくだろうと想像そうぞうしていた。
良吉りょうきちは、しばらく、ぼんやりとして、これをいた子供こども姿すがた想像そうぞうしていましたが、きゅうしたいて、あたりをさがしました。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしの、活発に鋭敏えいびんはたらおさな想像そうぞう好奇心こうきしんは、この一つのことにばかりはたらいた。