悚然ぞつ)” の例文
ばれた坂上さかがみは、こゑくと、外套ぐわいたうえりから悚然ぞつとした。……たれ可厭いやな、何時いつおぼえのある可忌いまはしい調子てうしふのではない。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たれおも怪我人けがにんはこばれたのだと勘次かんじぐにさとつてさうしてなんだか悚然ぞつとした。かれ業々げふ/\しい自分じぶん扮裝いでたちぢて躊躇ちうちよしつゝ案内あんないうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あれが来ると、悚然ぞつと、惣毛竪そうけだつてからだすくむのですもの、唯の怖いとは違ひますわね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
石碑せきひちからだ==みぎけば燕州えんしうみち==とでもしてあるだらうとおもつてりや、陰陽界いんやうかい==は氣障きざだ。思出おもひだしても悚然ぞつとすら。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぢい」とおつぎはみゝくちてゝ呶鳴どなつた。つめたい卯平うへいはぐつたりと俛首うなだれたまゝである。すこかしげたかれ横頬よこほゝ糜爛びらんした火傷やけど勘次かんじ悚然ぞつとさせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
戸外おもてへ来て案内する時のその声といふものが、実に無いんですよ。いつでもきまつて、『頼みます、はい頼みます』とかうしとやかに、ゆつくり二声言ふんで。もうもうその声を聞くと悚然ぞつとして、ああ可厭いやだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
勘次かんじそのとき不安ふあん態度たいどでぽつさりと自分じぶんにはつた。かれすで巡査じゆんさ檐下のきしたつてるのを悚然ぞつとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けだし、せずして、ひと宙返ちうがへりをして車夫わかいしゆあたま乘越とびこしたのである。はらふほどすなもつかない、が、れはあと悚然ぞつとした。……じつところいまでもまだ吃驚びつくりしてゐる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもひながら、瓜井戸うりゐど眞中まんなかに、一人ひとりあたまから悚然ぞつとすると、する/\とかすみびるやうに、かたちえないが、自分じぶんまはりにからまつてねこはう
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ると、する/\とうごく。障子しやうじはづれにえたとおもふと、きり/\といたつて、つる/\とすべつて、はツとおもたもとしたを、悚然ぞつむねつめたうさして通拔とほりぬけた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頸首ゑりくび脊筋せすぢひやりとるは、うしろまへてござるやつ天窓あたまから悚然ぞつとするのは、おもふに親方おやかた御出張ごしゆつちやうかな。いやや、それりつゝ、さつ/\とつてかれる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すなうへ唯一人たゞひとりやがてほしひとつないしたに、はてのない蒼海あをうみなみに、あはれ果敢はかない、よわい、ちからのない、身體からだ單個ひとつもてあそばれて、刎返はねかへされてるのだ、と心着こゝろづいて悚然ぞつとした。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゑきらひなのではありません。不厭いやなどころではないんですが、おもふと、わたし悚然ぞつとします……」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
廣袖どてらけて女中ぢよちうが、と、はた/\とそであふつたが、フトとりるやうにおもつて、くらがりで悚然ぞつとした。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
禮吉れいきち悚然ぞつとしながら、それでも青山あをやま墓地ぼちなかを、青葉あをばがくれに、はなむ、しろさをおもつた。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、うらひつゝ、めうことふぞとおもふと、うつかりしてたのが、また悚然ぞつとする……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……いま鍋下なべした、おしたぢを、むらさき、ほん五分ごぶなまなぞとて、しんことくと悚然ぞつとする。れないでねぎをくれろといふときにも女中ぢよちうは「みつなしのほん五分ごぶツ」といふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あゝ不思議ふしぎことがとおもすと、三十幾年さんじふいくねんの、維新前後ゐしんぜんごに、おなじとき、おなじせつ、おなじもんで、おなじ景色けしきに、おなじ二人ふたりさむらひことがある、とおもふと、悚然ぞつとしたとふのである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山里やまざとを、汽車きしやなかで、ほとんとりこゑかなかつたかれは、何故なぜか、谷筋たにすぢにあらゆる小禽せうきんるゐが、おほき獵人かりうどのために狩盡かりつくされるやうなおもひして、なんとなく悚然ぞつとした。それ瞬時しゆんじで。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見つゝ思はず悚然ぞつとして、いしくも咲いたり、可愛かはゆき花、あざみ鬼百合おにゆりたけくんば、我がことばに憤りもせめ、姿形のしをらしさにつけ、汝優しき心より、百年もゝとせよはひを捧げて、一朝の盛を見するならずや
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
積薪せきしんおもはず悚然ぞつとして、たゞちに衣冠いくわんつくろひ、わかよめはゞかりあり、しうとねやにゆき、もし/\とこゑけて、さて、一石いつせきねがひませう、とすなはたしなところふくろより局盤きよくばんいだし、黒白こくびやく碁子きしもつしうとたゝかふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五月雨さみだれはじと/\とる、そと暗夜やみだ。わたし一寸ちよつと悚然ぞつとした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かほ仰向あふむけに、悚然ぞつとするやうなうつくしをんな
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その悚然ぞつとして、道祖神だうそじんこゝろねんじた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をとこ悚然ぞつとしたやうだつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもつても悚然ぞつとする。——
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悚然ぞつとした。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)