龕灯がんどう)” の例文
旧字:龕燈
四つばかりの円柱で区画くぎられた部屋部屋が庭に向って張り出して、それらの壁と壁との間には切子細工の龕灯がんどうめ込まれ
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
天井から龕灯がんどうがさがっていた。瑤珞ようらくを持った南蛮製の、ギヤマン細工の巨大な龕灯で、そこからさしている琥珀色の光が部屋全体を輝かせている。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
街路も防寨も闇の中に沈んでいて、この大きな龕灯がんどうで恐ろしく照らされた赤旗のほかは、何にも見えなかった。
梁の上をくぐらした丈夫な綱を下へおろし、二階から幽霊だけを照していた龕灯がんどう仕掛けのあかりを暗くして、幽霊の腰に綱をつけるのを待ち、下からの合図と一緒に
四尺四方もある大きな早桶はやおけかついで、跡から龕灯がんどうを照しました武士さむらいが一人附きまして、頭巾面深まぶかにして眼ばかり出して、様子は分りませんがごた/\這入って来ました。
私はというと龕灯がんどう(9)を二つひきうけたが、ルグランは例の甲虫だけで満足していて、それを鞭索むちなわの端にくくりつけ、歩きながら手品師のような格好でそいつをくるくる振りまわしていた。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
が、行灯が消えると同時に、山田が持っていた龕灯がんどうの光が室内を照した。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
近江屋の分家で黒木屋五造というごく温和おとなしい男なんですが、生れつき夜眼が見え、まっ暗がりの土蔵なんかでも、龕灯がんどういらずに物もさがせば細かい仕事もするという奇態な眼を持っているので
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それが走るように近寄って来た。火の玉が闇を縫うようであった。窩人達の側まで来た。それは龕灯がんどうの火であった。龕灯の持ち主は老人であった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高い高い穹窿アーチ形の格天井ごうてんじょう……そこに吊された何千年来のものともわからぬ古風な龕灯がんどうや、どっしりとした井桁の枠のまったこれも穹窿形の円窓や
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
伏せていた龕灯がんどうを起すと、まるい灯の中に、兄妹二人の顔が赤々と浮出します。蒼白い妹のお秋の顔に比べて、赤黒い兄の顔は、何という不思議な対照でしょう。
龕灯がんどうをつけて、それを持って下に行け。下の戸の後ろに立っているんだ。馬車の止まる音を聞いたら、すぐにあけてやれ。はいってきたら、階段と廊下とで明りを見せてやるがいい。
私は、母の腕に抱かれたまま、もう涙も乾いてしまった顔を挙げて、壁の龕灯がんどうを眺めながら夢のような気持で考えていた。勉強をしなさい、勉強一三昧いっさんまいにおなりなさい。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
一歩平次が進むと、早くも五六歩飛退いた曲者、龕灯がんどうを高々と振り上げて平次を睨み据えました。
「そこで、向こうに龕灯がんどうがある。」と亭主は言った。「早くおりて行け。」
一個大型の龕灯がんどうが、天井から鎖で釣り下げられてあったが、その光は白味を帯び、晄々こうこうという形容詞があてはまるところから考えると、魚油灯でなく獣油灯でなく、化学的のものと思われたが
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土の上へ、横に置いた泥棒龕灯がんどうあかりは、塀に反射して、覚束おぼつかなくも二人の顔を照します。
龕灯がんどうの光は益々白く、部屋の隅々すみずみ隈々くまぐままで、昼のように明るかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
龕灯がんどうの穴の一つからもれる光がその顔を下から照らしていた。
「唯押しただけではいけない、この岩は一枚扉になっているが、龕灯がんどう返しの仕掛けだ、だが、樵夫きこりや狩人に触られて、扉が開いては何んにもならない。唯触った位では開かぬように、この通り岩扉の根にゴロタ石が積んである」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)